新横田基地公害訴訟団ニュース

第1号  (1994年12月 9日)
18年のたたかいと成果に確信をもち1万人新訴訟で「静かな夜」に実現を!
来年の早期結審めざし年内にすべての原告が陳述書を作成しよう

―大野元訴訟団副団長が公害弁連シンポで訴え―
12月3日(土)立川市多摩教育センターで、全国公害弁護団連絡会議主催の「差止め裁判の現段階と今後の課題」をテーマとするシンポジウムを開催。このシンポジウムでは、元横田基地公害訴訟団副団長の大野芳一さんが「一万人訴訟」についての訴えをしました。その内容をご紹介します。
強化される横田基地と増える爆音被害
横田基地における騒音公害は、いまから、4年前、朝鮮戦争の出撃するジェット戦闘機の騒音がその始まりでした。30年前、ベトナム戦争に出撃する戦闘爆撃機の昼夜をわかたぬ轟音の嵐は、生命と生活の場を脅かし奪うに余りあるものでした。その後、今日に至るまで輸送中継基地としてジャンボジェット機を上回る大型ジェット輸送機が離着陸し、いまなお、夜間・早朝におよぶ騒音に悩まされ続けているのです。しかも、この間、基地強化によって沖縄から、フィリピン・クラーク基地から輸送部隊が移駐し、3分間隔での訓練飛行を定期的に繰り返し、加えて、横須賀基地を母港とする空母・インディペンデンスが搭載する偵察機、戦闘攻撃機が離着陸訓練を行うことによって、一時期、年間1万回を下回るまでに減少した飛行回数が、今では約1.7倍の17000回を越え、騒音被害が更に拡大しています。このため、基地に土地を奪われている五市一町を含め、国の定めた騒音コンターの下で暮らす住民は、北は埼玉県飯能市、南は東京町田市に至る南北35キロ、九市一町の約10万世帯、30万人に被害が及んでいます。
今日、東西冷戦構造が崩れ、米軍基地の撤退や、アメリカ国内の軍事基地閉鎖が行われるなかで、横田のみ基地が強化され、被害増大を招いています。
18年におよぶたたかいと成果
ご承知のようにわたしたちは、基地強化による騒音被害をなくし、静かな平和な街を取り戻すため、裁判をたたかって参りました。
三次にわたる18年のたたかいにより「米軍の飛行活動は違法性がある」、「国の騒音対策は不十分かつ怠慢である」として、損害賠償支払いをかちとりました。
さらに、第三次訴訟・高裁では、国が米軍との間に「夜10時から翌朝6時までの飛行制限」を取り決めたことにより、私たちは、夜間飛行差止めに匹敵する実質的な成果を手にすることができました。これらは、弁護団・訴訟団および、支援の労働組合、民主団体の団結した力が、国やアメリカを追い詰め譲歩を引き出したものと思っております。
しかしながら、和解が不成功に終わった要因は、何よりも原告住民の数が、250世帯735人にとどまり、被害地域住民の極一部の限られた人たちであったことによります。従って、精一杯たたかってきましたが、やはり、運動の限界、力の限界を感じないわけにはまいりません。
私たちは裁判が終わって間もなく、18年のたたかいについて、原告を対象にアンケート調査を実施いたしました。
その結果、今日の司法の下では、判決の内容がやむえない到達点であったとの理解を示していますが、同時に、騒音のない静かな生活への要求は、極めて強く、再び裁判に立ち上がることも辞さないという、決意を示す回答が、数多く寄せられています。
いまこそ1万人訴訟で「静かな夜」の実現を
今、「夜10時から翌朝6時までの飛行制限」が必ずしも守られているわけではありません。
ましてや、訓練飛行の自粛が行われている訳でもありません。
判決が軍事公共性優越論を明確に否定したにもかかわらず、国や米軍は、安保条約を楯に訓練飛行を強化し、音源対策を行うことなく、騒音被害を拡大をさせているのです。
今私たちは、被害に対する住民の烈しい怒りと運動への熱いエネルギーの高まりを強く感じないわけにはまいりません。今までの運動の成果と教訓をもとに、全被害地域の人たちに呼びかけ、より広く、より大きい運動を組織して、国や米軍を決定的に追い込み、夜間飛行差止めを何としても実現したいと思っています。
私たちは、弁護団と協議の結果、新たな裁判闘争では1万人を越える原告団を組織すること、また、国には、当事者能力がないという裁判をふまえ、アメリカを被告として裁判を行うことを確認し、これから大きく運動を展開することにいたしました。
すでに訴訟準備会は、来年3月、訴訟団結成、9月提訴を行動目標とし年内に瑞穂町、昭島・八王子市の一部の自治会に訴訟説明会開催の申し入れを行い、以後、順次九市一町の全被害地域に広げていく予定で取り組んでいます。
判決を無視した理不尽な飛行活動をなくし、静かな生活を取り戻すため、全被害地域の多数の住民が立ち上がり、団結し連帯して「夜間飛行差止め」を実現する決意でおります。
どうぞ今後とも、ご支援くださいますようにお願いいたしまして訴えを終わります。

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