新横田基地公害訴訟団ニュース

第14号  (1997年 3月10日)
不当な判決ならただちに控訴
十分な議論もせずに対米訴訟だけを分離して判決はおかしい

私たちは、横田基地の米軍機の飛行騒音で被害を受け続けることに我慢できないと、「静かな夜」と「住みよい生活環境」の実現を求めて、多くの住民が協力して新しい裁判を起こしたのです。最高裁は「米軍の飛行は違法状態にあり住民に被害を与えている。被害を与えているのは米軍であるから、国を訴えるのは失当である。」として、夜間・早朝の飛行差止めを認めませんでした。
そこで、今度は、被害を与えているアメリカ政府をも被告にした訳です。なのに、アメリカ政府は「日本の裁判権に服さない」と応訴を拒否してきました。そして、日本政府も何の抗議もコメントもしません。また、裁判所は「住民に被害を与えるアメリカ政府」を呼び出すことをせずに、対米訴訟を分離して「却下の判決」を出そうとしています。私たちはとても納得できません。私たちはいろいろの見解があっても、安保条約や基地を問題にしている訳ではありません。被害を与えているのは国ではなく、アメリカ政府であると認定したのは最高裁です。だから、被害をなくしてほしいからアメリカ政府をも被告にしたのです。アメリカ政府が応訴を拒否してきたのなら、裁判所がアメリカ政府を呼び出すべきです。なのに、それをせずに十分な議論もせずに一方的に却下することはとうてい容認できません。
日本国憲法第32条は「何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」と書いてあります。もし却下するならば、私たちは違法な米軍機の騒音被害をなくすためにどうすればよいのでしょうか。裁判所自ら、日本国民の裁判を受ける権利を奪うことになり裁判所が却下した場合、幹事会で確認したとおり、どういう論理か検討したうえで「静かな夜」の実現と国民の裁判を受ける権利守るためにただちに控訴します。マスコミをはじめ、各方面が注目し、裁判所も法廷の傍聴を意識しています。
2月14日の第2次提訴、2月20日の第1回裁判に裁判が続きますが、原告のみなさんが判決裁判の傍聴に参加されるようお願いします。裁判所の不当な態度と不当な判決を許さず、私たちの決意を示しましょう。


これからの裁判の展望
弁護団事務局長  吉田 栄士
2月20日の裁判、大変すばらしかったと存じます。整然と席につき緊張感の中にも余裕があり、特に原告の方々の意見陳述はそれぞれ堂々としていました。他の空港訴訟の弁護団も簡潔にわかりやすくまとめてくれました。16人が入れ替わりに陳述しましたが、皆さん準備が十分されていて、時間にも余裕をもって終わることができました。
国は答弁書を提出したが、きちんとした答弁は回避し、全体的に消極的で弱々しいものでした。こちらは損害賠償について、勝訴したら仮に執行できるように求めていますが、これに対して国は、その開始時期を遅らせてほしいという答弁をしています。仮執行は判決により損害賠償が認められて初めて問題となるものです。その時は条件をつけてくれという答弁です。どうも国は損害賠償については最初から敗訴を予想しているようです。5月と7月に裁判があります。夏休みをはさみ、今年はこのハイペースで進行していくでしょう。夏からは陳述書作成に入ります。立証計画も立てて短期決戦でやる予定です。
3月14日にアメリカに対する裁判の判決があります。アメリカは応訴してきませんでした。これも予想はしていましたが、今回の裁判は実質的には、外国政府を相手する裁判としては初めてのケースです。どのような理由を裁判所が考えるか、その影響力は大きいと思います。アメリカを巻き込んだことは事実です。今後も裁判所内外でアメリカの良心に訴えていきたいと思いますし、やっていけると思います。
ニューヨークタイムズ紙への意見広告、2月25日に掲載されました。真面目な意見も多く寄せられてきています。環境と生活を守る、というのは世界共通の社会通念です。間違ったことを要求していないという信念を持ち続けたいと思います。


裁判所に申し入れ
榎本弁護団長、福井代表幹事はじめ弁護団・訴訟団役員が、裁判所に対し「裁判官との面会を申し入れ」をしました。
@拙速な判決期日の指定を取り消すこと Aアメリカへ訴状を送達すること B原告らの裁判を受ける権利を踏みにじらないこと C十分な議論をつくし判断すること D6000人の原告の期待に応えること、などを申し入れました。
しかし、裁判官は会うことを拒否し、判決期日の指定を変えない、理由はいえないなどの態度でした。


2月20日第1回法廷  〜弁論と陳述国側を圧倒〜
2月20日、新横田基地公害訴訟の第1回口頭弁論が、東京地裁八王子支部で行われました。昨年4月10日に日米両政府を被告として提訴。今年2月14日の第2次提訴により5921人という空前の規模の原告団となり、訴額の合計は63億円あまりにのぼります。この日の口頭弁論では2時間のうち1時間半が原告側の陳述に当てられ、原告、弁護人あわせて16人が整然と発言しました。初めて陳述にたった原告住民は、それぞれ被害の実態と「一日も早く平和な空を」との思いをせつせつと述べました。公害弁連、小松基地公害訴訟川本弁護士、厚木基地訴訟野村弁護士、嘉手納基地訴訟国府弁護士の応援意見陳述がありました。
国はアメリカに飛行禁止を要求すべき
冒頭弁論 弁護団長  榎本 信行
本件原告は在日米軍横田基地の周辺に居住している方々ですが、その中でも、いわゆる生活環境整備法の4条で「音響に起因する障害が著しいと認められ」ているW値75の範囲内の人に限っております。そしてこの地域は、最高裁で賠償責任があるとされた地域でもあります。
この中に20万人以上の方が居住してきます。
この外側に住んでいる方も被害を受けており、原告になるよう希望された方も沢山おられましたが、この裁判ではW75以内の人に絞らせていただきました。
ご承知のとおり、去る14日に第2次訴訟を提起しましたが、これも同じです。それでも総計6000人近い人数です。まだまだ被害を訴えて、訴訟に参加したいという方々がおられます。このことは、被害がいかに深刻であるかを物語っています。私たちの裁判に対しては、基地周辺の自治体からの厚いご支援があります。被害地域の八市一町の市長さんや町長さん、また東京都もこの裁判に対して御協力をいただく態勢になっております。ところで、本件はアメリカ合衆国も被告として訴えております。後の他の代理人から詳しく述べるようないきさつで、飛行差し止めについては最後手段として訴えたものであります。しかし遺憾ながら米政府は応訴を拒否しました。この法廷にいないアメリカ政府の批判をあまりするのはフェアーではないと思いますので、多くは申しませんが、米国は自らの行動について、堂々と受けてたって弁明すべきです。
対米訴訟の点については、裁判所に対し日本の司法機関として毅然とした対応を求めるものであります。そして訴状を正式に送達するよう要求します。わが国内で行われている不法行為について、多数の平凡な市民が加害行為の中止を求めているのに対して、ワシントンDCまで行ってアメリカの裁判所に訴えろというのは、誰が考えても正義に反します。後に他の代理人が陳述するように、主権免除はもはや時代遅れあり、大審院時代の古色蒼然とした判例を覆すべきであります。何よりも、何千人もの市民の願いと要請を日本の司法が拒否することは、公正と正義にもとるものといわざるをえません。対米訴訟野点について、被告国は他人ごとのような顔をされていますが、とんでもないことです。元来国が、自らの国民が受けている被害の中止を求めて奮闘努力をすべきなのであります。わが国の最高裁判所が既に満4年前の2月25日に、横田基地の飛行は違法だと、明確に判断をくだしているのです。国は、アメリカに対して堂々と飛行の禁止を要求すべきでした。現在もそうすべき立場にあります。違法であることが判例上確定している行為をいつまでもやめさせられない国の対応に対して、懲罰的な慰謝料を請求できるとも考えられます。私たちの慰謝料請求は、こう考えると、ごく控えめの一部請求です。
当裁判所はすみやかに審理を進めていただきたい。横田基地からは、今も軍用機が離着陸しています。被害は続いています。20万人以上の人が、この裁判に期待しています。
裁判所は審理を急ぎ、原告等の請求を速やかに認めるよう要求するものです。


原告の陳述(要旨)
瑞穂町  山口 義郎さん (訴訟団代表幹事)
基地の北側フェンスからわずか60メートル現在地に住んでいます。冬、北風に向かって飛行機が離陸すると、窓ガラスはビリビリと音を立てます。排気ガスのため、ベランダの手すりを拭くと、雑巾は真っ黒になります。
瑞穂町は裁判ときいただけでしりごみするような土地柄です。が「静かな眠れる夜を」の一点で一致し、1次、2次を合わせて455人が原告団に加わりました。原告の真剣な願いをきき、公正な裁判をお願いします。

日野市  清水 登志子さん
引っ越した次の朝、洗濯物を干しているときに、飛行機が落ちてきたように見えました。その恐怖は忘れられません。
赤ん坊を起こしてしまう恐怖の生活は成長にも影響します。爆音で学校の授業は中断し、友達の話も聞こえず、昼休みの校内放送の音楽も中断します。
湾岸戦争の時にはいつもの何倍も飛び、娘は「ここにも戦争はくるの?」といいました。
一日も早く平和な生活を返してください。

福生市  矢口 隆さん
基地にすぐそばで、爆音のためテレビの画面は揺れ、電話も家族の団らんも中断してしまいます。私は音楽が好きなのに、FM放送も聞き取れない。
旧訴訟の裁判中にできた協定では、夜10時から朝6時まではいっさい飛行活動をしないことになっているのに、早朝六時前からエンジンテストやアイドリングの騒音のため、眠りを破られています。
私たちの願いを実現してください。

昭島市  池田 浩美さん
飛行コースの直下で、二人の子どもの妊娠中には耐え難く感じました。自分の心臓の音が聞こえるぐらいの動悸におそわれたのです。
1歳の息子は爆音で泣き出します。胸が痛みます。空母艦載機のS3Bバイキングの夜間離着陸訓練の音は、ビーン、ビーンといやな音で、子どもは「いやいや」といいます。
5歳の娘の保育園では、爆音がする子どもたちがいっせいに耳をふさぎます。
これから成長していく子どもたちのためにも、静かな安心できる夜をください。

飯能市  菅間 徹さん
飯能市は横田基地から離れていて、結び付けて考えられないかもしれませんが、飛行コースの真下です。
朝、飛行機が飛び立つとき、夕方、帰ってくるとき、話も、電話もできません。神経もいらだちます。墜落するのではないかと子どもはおびえます。
0〜3歳児の保育を行っていますが、子どもたちが楽しそうに散歩しているときも、突然覆いかぶさるように飛んでくる。子どもたちは「こわいよ」と抱きついてきます。
家族はもちろん、子どもたちが安心して暮らせるよう、早期の救済をお願いします。

八王子  渡辺 てつよさん
夫と2人の子どもと、老後まで住み続けられるところを、と思って引っ越してきました。
朝6時までにも飛び、日中は1時間に2〜10機飛びます。わが家の横で機体を傾け、3機編隊で旋回をくりかえしている最中に、また南側からやって来るものもあります。まさに過密地帯。夜の7時から9時の一家団らんの時にも容赦なく、です。
遊びに来た母は「戦争中を思い出してぶきみ」と言いました。この事態は異常なことです。


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