新横田基地公害訴訟団ニュース

第20号  (1998年4月8日))
4割の世帯の陳述書が完成
原告の皆さん、今年の訴訟団の最大の課題である陳述書づくりが前進しています。
この間、かくしぶごとに会場を設定、陳述書づくりをすすめ、原告全世帯の4割にあたる697世帯の陳述書が完成しました。この間作成されたどの陳述書も、それぞれの立場から被害の実態を訴え、「静かな夜と住み良い生活環境」が住民の最小限の要求であることを示しており、裁判勝利への最大の保障となるものです。今年いっぱいで原告全世帯(1749世帯)の陳述書を作成します。作成会場は、各支部ごとに設定し原告の皆さんにご案内します。
まだ陳述書を作成されていない原告の皆さんのご協力をお願いします。

家族襲う爆音直下の騒音  振動で戸棚揺れる
両親、夫、3人のこどもの7人家族で、爆音直下のW値85の地域に居住するMさんの陳述書から一部を抜粋し紹介します。Mさんは3月5日の第6回裁判で、爆音直下での被害や不安について証言しました。
<騒音状況>
 居間からは、南から家に向かって着陸してくる飛行機、家の真上から飛び上がっていく飛行機が見え、激しい騒音をまき散らしていきます。大型輸送機や空中給油機などジェット機の騒音がとくにひどく、振動で食器戸棚がカタカタという状況となります。
 南側から北側へも、スタートでエンジンをフル回転させて激しい爆音を出し、飛行機が離陸しているのでひどい騒音にさらされます。
 また、訓練飛行で旋回してくる飛行機も、うるさくてたまりません。ヘリコプターが長い時間止まっているようにパタパタと飛んでいるのもうるさく感じます。
さらに、エンジンテストなどの地上音も、朝は6時以前から、夜は私たちが寝る午後10時ごろまで基地から響いています。
 それ以降夜中にも飛行機が飛んでくることがあります。

<睡眠妨害>
 夜10時頃、布団に入って寝ようとするときに飛ぶことがあります。

<日常生活妨害> 
 飛行機が自分の家の上を飛んでいるので、とてもうるさく、家族の団らんの時など、会話が聞こえなくなります。電話も飛行機が飛ぶときはまったく聞き取れないので、中断します。騒音のため、テレビやラジオの音も聞こえません。そのようなときは、とてもイライラします。
 隣の奥さんと外で育児などについて立ち話をしていると、次々と飛んでくる飛行機の騒音に、イライラして頭が痛くなります。

<育児への影響>
 私たち姉妹が赤ん坊のときは、飛行機のたびに目を覚まして泣きじゃくり、母親が四六時中背中におんぶして家事をしていたということです。私がこどものころ飛行機の爆音のために、家の窓が激しく振動するので、ガラスが割れてしまうのではないかと、窓ガラスを押えていたのをいまでも覚えています。また、外出友達と遊んでいても、飛行機が飛んでくると遊びを中断して耳をふさいだものでした。
 私が中学校のころは、家ではうるさくて勉強に集中できないので、友達の家に行って勉強していたことがありました。
 私のこどもについても、外で遊ばせているときなど、子どもが怖がってしがみついてくるのです。長女と外出遊んでいたとき飛行機にびっくりして私の方にかけだしてきて、車に轢かれそうになったこともありました。私が怖いなどと言うとこどもが怖がってしまうので、「飛行機は大丈夫よ」と言って安心させるようにしてきました。

第一回現場検証が実施される
弁護士  中杉 喜代司
 東京地裁八王子支部では、2月17日瑞穂地区・福生地区で現場検証を実施しました。
騒音被害は、裁判官が実際に基地を見聞し、騒音を聞いてこそ、はじめて実態がわかるのです。
 そこで、原告側では、裁判官が早く法廷を出て原告らの居住地域に出かけ、現場検証をすることを求めてきました。その結果、審理開始から一年足らずで第一回の現場検証を実施することができました。
 飛行機は、冬期北へ向かって飛び立ちますので、今回の現場検証は、基地北側の瑞穂地区を中心に、福生市役所を含めて行いました。
 検証は、まず基地内の施設や飛行機の状況を見分するため、基地東側のビル屋上と基地西側の双葉ドライブイン屋上より検証しました。
 次に、東京都や市役所が騒音測定している場所を検分するため、瑞穂町内の東京と固定測定場所と福生市庁舎の固定測定場所を検分しました。
 さらに、瑞穂町内の原告高橋さん宅で本人尋問を実施し、裁判官が高橋さんから騒音被害の実態を聞きながら、そこに飛んでくる飛行機の騒音を体験してもらいました。このように裁判所外で行なう尋問を出張尋問といいますが、裁判官には尋問を聞いてもらうだけでなく、尋問中に騒音を体験してもらうことが重要です。このときは大型ジェット輸送機C17が飛来、家外で93.5dbA、家内で72dbAの騒音がありました。
 このほか、国側申請で、瑞穂町のスカイホールや瑞穂町内の民家で騒音測定調査をしましたが、飛行機が殆ど飛ばず、国側の測定は見込みはずれに終わりました。
今回の検証では、基地の状況や瑞穂地区の様子を裁判所に伝えることができましたが、C17を除いて検証中飛行機がほとんど飛ばなかったため、騒音を十分に体験してもらうことができませんでした。
 今後、基地南側の現場検証や、騒音被害の大きい夜間・早朝の検証も要求していきますので積極的にご参加ください。

高橋さんの本人尋問を実施
弁護士  加納 力
 高橋さんのお宅は、横田基地の滑走路延長上約600メートルほどの場所にあり、そこはまさに飛行直下である。騒音のレベルでいうと90Wという高い数値を示す地域であり、それこそ、基地の南側でいえば集団移転を余儀なくされた昭島・堀向地区と変わらない。だからこそ裁判官を現地に招き、軍用機が屋根すれすれに飛んでいく家の中で、そこに暮らす被害者から生の声を聞いてもらうことが重要だったわけである。その意味では高橋さん宅での原告本人尋問は大きな成果のあるものになった。
 2月17日の検証スケジュールは予定より30分以上早く進み、11時前には尋問が始まった。高橋さんのお宅の客間には座卓が並び、急ごしらえの「法廷」ができあがっている。裁判官3名、弁護団・国側それぞれ2名のほか、高橋さん、書記官、速記官といった裁判所職員、そのほか騒音測定のために訴訟団・弁護団から数名の方に隣室に入ってもらい、国側関係者も数名詰めかけている。そうした非日常的な中でも高橋さんの証言は堂々としていた。どうしてこんな飛行直下に住むことになってしまったのか、「よくアンテナにひっかからないな」と思うほど低く飛ぶ軍用機が、どれほどの爆音を轟かせ家ごと振動させるのか、楽しみにしているご近所の方とのおしゃべりや夜のテレビがいかに妨げられているか、病気になってもゆっくり休めなかった亡き旦那さんのエピソードなど、高橋さん一流の山形弁で語っていく様子には、裁判官もうなずきながら耳を傾けていた。
 ちょうど尋問中にC17という大型ジェット輸送機が真上を飛び立ち、高橋さんの証言も聞き取りにくくなった。「いつもこん。なひどい音がするの」との質問に「いやあ、こんなもんじゃねえ」という答え。裁判官も推して知るべしといったところであった。
 国側の反対尋問にもほとんど動じない高橋さんの様子からは、やはり被害者の生の声は説得力があると改めて実感させられたのであった。高橋さん、本当にお疲れ様でした。

基地北部現場検証同行記
瑞穂支部  岡口 明
 北風の吹く冬、身体に刺し込む寒さとともに、横田基地から飛び立つあの大型輸送機の腹にまで響く爆音を体験すれば、必ず誰でも静かで墜落の不安のない生活を望むと思います。
現場検証は、その点で重要な判断材料になります。昔から「百聞は一見にしかず」というとおり、即断ができるくらいのインパクトを与えるはずです。
 そのような期待を持って補助滑走路すぐ横にある佐木建鉄に午前8時50分に集まりました。続々と集合してくる原告団に、盛岡弁護士から、予定表のはいったパンフレットと希望者には使い捨てカイロが配られ、「今日は裁判官に被害現場を知ってもらい、体験をしていただく。わたしたちは、じゃまにならないよう、まわりで見守っているだけですが、重要な行動ですので、一日をともにし、寒さに負けずがんばりましょう。」とあいさつがありました。
 一週間前は、うんざりするほど飛び回っていたのに、今日は飛ばないなあと不思議に思っていたところ、なんとこの日はアメリカではジョージ・ワシントンデーとかいう休日でした。「時差から考えてもう少しすると飛び出すでしょう。」と誰かから知らされました。
 瑞穂スカイホールにいるとき、タクシーがわりに使われているというC21小型ジェット機がはじめて飛び立ちました。屋内にいた裁判官はつまらなかったのか、早々に三ヶ所目の飛行直下原告宅へいくことになりました。
 ここは本人尋問も組まれていて、タイムリーに輸送機も飛びました。このあと双葉ドライブインで昼食をしながら、長野オリンピックスキージャンプ団体戦日本金メダルの飛行も見ることができ、記憶に残しやすい北部現場検証となりました。

3人の原告の本人尋問
3月5日 第6回裁判

 昨年11月の裁判、2月17日の現場検証に引き続き、3月5日、第6回裁判が行なわれ6人の原告が参加しました。
 裁判は、前回に引き続き3人の原告の本人尋問が行われました。
昭島市の南部、「田中町住宅」に住み、世話人として活躍している金沢祐三さんは、国の主張である「危険への接近」に対し、公社の入居募集時には、騒音について知らされなかったこと。現在の騒音被害、結露やカビの発生など防音工事後の被害、自治会の騒音対策運動の経緯などを証言しました。
 入間市三ツ木台ののMさんは、平成5年に東大阪から息子さんの家族と同居するため転居してきました。
騒音被害に悩まされることになった経過と被害感について証言しました。
 立川市で基地の滑走路間近に生まれたときから住んでいるMさんは、爆音直下の日常生活の被害や不安について証言しました。


なぜ破壊される生活条件
良岡 千春
 裁判を傍聴しながら、まさか私の人生に裁判所通いが続くとは思いもよらなかったのですが、貴重な経験として、また、結果の期待感を楽しみにして、まだまだ続くと間違いなし。
 さて、第1回から現場検証もはさみ、第6回裁判までの参加で、飛行機の騒音被害の訴えをされた皆さんのお話を聞くにつけ、強く感じたことは、ごくあたりまえの生活条件が平然と破壊されている状況はいったいどうしてなのだろうということでした。生活を営む環境を私たち人間は創り出す力を持ち得ているのに、壊し失っていくとはいったいなんなのか。
 簡単に考えれば、 そこに生活する人々が存在することが基調ではなく、他の理由が中心だからなのですね。そこから発生する害が、どれほどの破壊力を生み出しているのかなどは論外に。
 原告になり、事実を見聞・認識するにつけ、逆さま世界に甘んじる気は、全くないと強く思うこの頃です。年月を重ねるとマヒさせられるかも知れない、感覚を損なうことがないように、もうガマンの美徳を蹴飛ばしてでも素直に主張し訴え続けるものです。
 私になりにかわり、裁判で証言を続けてくださる方々に、思いを重ね、しっかりと正義の道理を裁判所が判決で示してくださいますことを切望して、私はこれからも裁判傍聴に出かけます。

東富士演習所を見学
訴訟団の女性の会(仮称)第1回の集まりで、「沖縄の米軍海兵隊が横田基地経由で富士山で実弾演習をしている。それを見てみたい。」と話題になりました。
そこで、2月27日午前は演習見学、午後は温泉を楽しむというバスツアーを計画し37人が参加しました。バスの中では、弁護団の岸弁護士から裁判の様子も聞くことができました。広大な演習場を見学し、目からうろこを落としたり、温泉で楽しいひとときを過ごしたり、第1回フィールドワークは大成功でした。参加者の感想を紹介します。
ゲートから戦車が
北富士に入ったと案内が入ったとたんにゲートから戦車に乗った自衛隊が出てくるところと出会い、バスに乗っている間も横を見ると何台もトラックが走っているのにびっくりしました。雄大な富士の裾野がが四対一の割合でアメリカに占領されているなんて不合理です。

思いやり予算に驚き
雨のせいもあり富士山を見れずに残念だった。しかし、見えない富士山の前に広がる広大な土地のすべてが米軍の基地に使われているなんてもったいない気がした。
「思いやり予算」がスロットマシンの修理員、ボーリング場のマネージャーなど、米軍基地にいるほとんどの人に配られているという話に驚いた。

何回も遊びにきたが
日本共産党の神谷議員の歴史を含めての話がとても勉強になりました。
富士山、富士五湖など何回も遊びに来て降りましたが、こんな大規模な演習場があって、米軍による実弾演習が行なわれていたのには驚きました。

横田基地に豪華米軍住宅
「思いやり予算」で横田基地に、1戸あたり5000万円、標準で120uと、豪華なマンション並みの米軍住宅が3棟12戸建設されることになりました。
 このほかにも、青少年センター、多目的厚生施設、宿泊施設などが建設されます。
 政府は来年度予算で、安保条約上の負担義務のない「思いやり」予算を2538億円計上しました。これは中小企業対策費の1.4倍にあたります。このうち737億円の施設建設計画の具体的内容が、2月20日の日米合同委員会で合意されました。米軍は「これらの都市住宅タイプの家族住宅は最も快適」(三沢基地のホームページ)と絶賛しています。
 「思いやり予算」で日本は米軍基地労働者の労務費も100%負担していますが、韓国(35%)、イタリア(16%)、イギリス(9%)、ドイツ(6%)などと比べても突出しています。
日 米地位協定24条は、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、(施設、区域、飛行場などの路線権をのぞき)日本国に負担をかけないで、合衆国が負担する。」と定められており、まさに異常な事態です。

日米合意後も減らない夜間飛行早朝の飛行回数は1.5倍に
福生市統計に見る日米合意後の飛行実態
89年11月18日旧横田基地公害訴訟ののたたかいの成果として、日米合同委員会の「合意事項」が30年ぶりに改訂され、「午後10時から午前6時までの間、横田基地における、米軍機の飛行および地上における一切の活動を規制する。」と外務省は発表しました。
 では、「日米合意」後の夜間飛行の状況はどうなっているでしょう。
 福生市のリサイクルセンターでは、75db以上の音が3秒以上続いた場合をカウントする方法で横田基地の騒音測定を行なっています。(70dbの騒音は電話やテレビが聞き取れない大きさ、80dbはボーリング場の中の騒音)
 84年から94年の測定結果(表@)によって、「日米合意」前後の5年間の比較をすると、午後10時から午前7時までの飛行回数は4534回から4095回と約1割少なくなっています。「日米合意」の内容である午後10時から午前6時の飛行回数(表A)は、合意以降減ってきていますがいぜん飛行は続いており、「日米合意」は守られていません。
 しかも、私たちの要求である午後9時から午前7時までをみると、夜間飛行の回数、率ともに「日米合意」後かえって増えていることがわかりますA(表B)。
 これは、午前6時から7時までの飛行回数がかえって増えているからです(表C)。
 これらの資料は、不十分ながらも日米合同委員会の合意が夜間飛行の一定の歯止めになっていることを示しています。
 しかし、反対に飛行回数の増えている午前6時から7時といえば多くの住民が睡眠をとったり朝の団欒を楽しんでいる時間です。
 日米両政府は、地上音を出さないことも含め「日米合意」を遵守することはもちろん、訴訟団や住民要求にこたえ一刻も早く合意内容を変更し、午後9時から午前7時までの飛行および地上における一切の活動を止めるべきです。
航空機騒音測定結果と夜間飛行の割合
                     測定 福生市リサイクルセンター
@ 測定日数 7〜22時 22〜7時 合計
84年 365 19,456 1,159 20,615 6.0
85年 365 16,610 838 17,448 5.0
86年 350 15,237 696 15,933 4.6
87年 359 15,541 860 16,401 5.5
88年 365 16,034 981 17,015 6.1
1,804 82,878 4,534 87,412 5.5
89年 363 15,970 833 16,803 5.2
90年 354 13,462 819 14,281 6.1
91年 365 16,790 797 17,587 4.7
92年 365 17,936 773 18,709 4.3
93年 365 20,106 788 20,894 3.9
94年 363 16,952 918 17,870 5.4
1,812 85,246 4,095 89,341 4.8
A 6〜22時 22〜6時 合計
87年 16,006 395 2.5 16,401
88年 16,451 564 3.4 17,015
89年 16,378 425 2.6 16,803
90年 13,885 396 2.9 14,281
91年 17,260 327 1.9 17,587
92年 18,451 258 1.4 18,709
93年 20,697 197 1.0 20,894
94年 17,647 223 1.3 17,870
B 7〜21時 21〜7時 合計
87年 14,956 1,445 8.8 16,401
88年 15,607 1,408 8.3 17,015
89年 15,317 1,486 8.8 16,803
90年 12,941 1,340 9.4 14,281
91年 16,215 1,372 7.8 17,587
92年 17,371 1,338 7.2 18,709
93年 19,204 1,690 8.1 20,894
94年 16,268 1,602 9.0 17,870
C 6〜7時
87年 465 2.8
88年 417 2.5
89年 408 2.4
90年 423 3.0
91年 470 2.7
92年 515 2.8
93年 591 2.8
94年 695 3.9

「被害の実態わかった」
      看護学生からお礼状
一泊の体験学習で横田基地の見学にきた勤医会東葛看護学校の学生から訴訟団へお礼状が届きましたので紹介します。

 先日は、貴重な時間をいただきありがとうございました。
 私たちの全く知らなかった訴訟のことや基地周辺の被害のことなどしることができました。その被害の中で国を訴えようというのは、すごいパワーだと感じました。まだ、「お上を訴えるなんて」という世の中で、人間の権利を得ようと努力している姿を見て、見習いたいと思いました。
 いままで基地問題が私たちにどういう風に関わってくるのかわからなかったのですが、「私たちの国」という面で考えていくと、常に目をそむけてはいけない問題だということに気が付きました。そして、基地があることによって健康や生活が阻害されていることを知り、医療従事者ならば絶対に知らなければならない問題なのだと感じることができました。
 まず、基地周辺の人たちの人権を守り、さらには基地をなくしたいと私たちは思っています。これからレポートを作るにあたり、私たちが事実を知ったうえで、できること、やらねばいけないことを先生と一緒に話していきたいと思います。レポートができるのを楽しみに待っていてください。
 本当にありがとうございました。

勤医会東葛看護学校一科二期生基地公害グループ

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