新横田基地公害訴訟団ニュース

第23号  (1998年 9月 6日)
陳述書作成6割突破!
来年の早期結審めざし年内にすべての原告が陳述書を作成しよう
日本の裁判史上最も多い1749通の陳述書をつくり、原告全世帯が裁判所に直接被害を訴えるという壮大な取り組みがすすんでいます。
7月の弁護団合宿には訴訟団からも18人が参加し、来年の早期結審めざし年内に全世帯の陳述書を作成しきることを確認しました。
合宿に参加した代表幹事のみなさんにご寄稿いただきましたので紹介します。

10月27日昭島の昼と夜の現場検証 代表幹事  大野 芳一
7月287日から29日にかけて行われた弁護団合宿会議では、今後の裁判の見通しとして、来年の結審を前提に原告陳述書の作成・提出、証人尋問、現場検証の三点を精力的に取り組むことが確認されました。
私たち原告訴訟団に託された課題は、陳述書作成を今年中に完了させること、また、裁判官自身に被害をしっかりと実感してもらうための現場検証(原告本人尋問を含む)を必ず成功させるということに尽きます。
昭島支部では、この二つの課題を原告訴訟団が裁判官に直接働きかけることのできる重要なイベントとしてとらえ、全世話人が一致協力し、責任を持って取り組みたいと考えています。
すでに陳述書作成は6月中に6割を超えており、残された分の作成を9月、10月で8割へ、11月、12月で10割(完了)にと二段階で押し上げていく計画です。
また、現場検証については、10月27日(火)昭島地区を中心に計画されており、しかも夜間の騒音検証を狙いとして夜八時までの現場検証となるため、よ り多くの人の参加を得て是非とも成功させるべく、昭島の総力を結集していくつもりです。
瑞穂の出遅れ取り戻したい 代表幹事  山口 義郎
訴訟団のみなさんお元気ですか。夜ともなると涼風が心和む今日この頃です。裁判も順調に進んでおりますが、原告のみなさんの陳述書作成修了者数は全体で1105(63%)になっております。
今後早急に陳述書の集約が求められております。瑞穂支部も53%とで遅れぎみですので、瑞穂の原告の皆さんのご協力をお願い申し上げます。また、6千人の原告の方々が、提訴時の原点に立って「静かな夜」を取り戻すことで意思統一し、差し止め請求を勝ち取るとともに、アメリカを法廷に引き出して、原告訴訟団の要求を認めさせましょう。

各支部の陳述書作成状況
支部 原告世帯数 終了世帯
昭島 553 321 58.0%
八王子 624 429 68.8%
福生 218 156 71.6%
瑞穂 135 72 53.3%
立川 13 1 7.7%
日野 148 96 64.9%
羽村 19 1 5.3%
武蔵村山 8 5 62.5%
入間 18 16 88.9%
飯能 13 8 61.5%
全体 1,749 1,105 63.2%
騒音被害の実情を訴え 第3時訪米団を派遣
今年も国際法律家協会の呼びかけで、十月十六日から二十四日にかけて第三次訪米行動が取り組まれます。
米軍基地撤去・基地公害の根絶をめざし、米軍の被害を受けている各地域の団体によるニューヨークでのパレード、シンポジウムや、アメリカNGOとの交流が予定されています。
訴訟団からも代表三人を派遣し、横田基地の騒音公害の実情を訴えてきます。


「峠」は越えたか
代表幹事  福井 弥助
種々の情報を総合すると本訴訟も概ね来年の夏頃に結審、再来年の前半には判決の見通しのようです。そこで少しだけ回想も含めて私見を述べてみます。
私たちが本訴訟を提起してから準備期間も含めて概ね4年。当初目標にした1万人訴訟には残念ながら時間的制約もあり届きませんでしたが、現実に6千人の原告を組織して訴訟提起できたことは、概ね満足すべき結果でありました。これもひとえに自治会ぐるみで参加の八王子をはじめとする各支部の皆さんの尽力と理解の賜と衷心より敬意を捧げておるところです。
裁判の現状は、原告本人尋問も終わりに近づき、現場検証の一部を残してほぼ終焉を迎える見込みです。しかしながら、これに並行して行われている原告本人の陳述書の作成が、年頭から取り組まれておりますが、いまだ満足できるものになっておりません。
この作業は非常に地味で退屈な仕事ですが、法廷で陳述することにかわる非常に大切な事柄なのです。理解のある原告の約7割のかたはすでに完了しておりますが、いまだ3割程度の人が残っております。さまざまな都合があるとは思いますが、ある程度の義務感を持って対応していただきたいと思っているところです。
いろいろな考え方や地域感情のあることは当然のことですし、これはとりもなおさずその組織が健康体であることの証でもあり、むしろ歓迎すべきことです。もともと本訴訟は特定の人の考えや思想で提起したものではなく、そこに住む善良な生活者が、「静かな夜を返せ」を合言葉にして結集し、最大公約数の要求を実現すべく立ち上がったことに真の意義があることを思い起こしていただきたいのです。
みんなで決めた崇高な第一義的最終目標に向かって堂々と行進を続けて勝利の判決を迎えたいものです。このことが私たちがめざした唯一絶対の所期の目標であると思うからです。
全国的に責任を持つ名誉ある大訴訟団の一員であることに自覚と誇りを持って陳述書の作成をやりきり、裁判所の法廷を埋め尽くし尊敬する強力な弁護団の先生方とがっちりと力をあわせがんばっていきましょう。
みんなは一人のために、一人はみんなのために。


弁護団合宿に参加して
八王子合同法律事務所  鈴木 美枝子
今回の合宿は、昨年秋から取り始めた陳述書の裁判所提出の準備も含まれました。
初日は朝10時から午後3時まで、各地域の世話人と弁護団で陳述書に原告番号、W値(うるささ指数)の記入やチェック、そしてその原告がどこに住んでいるか地図に落としていく作業です。
地域によって、すでに原告番号記入済や地図にその都度落としたところもあって、さまざまですが、大所帯の昭島や八王子は大変な作業になり、みんなで手伝いました。特に八王子は、住宅地図をつなげて、床に広げて原告の家を探していき、やっと探し当てるとワッと歓声がわきます。細かい作業で目がチカチカしてきます。みなさんどうもご苦労様でした。
私の住まいは八王子市大谷町で、原告の線引きの中にはいっていませんが、飛行機の騒音はけっこううるさい地域です。とくに朝7時、8時台は飛行機が多く、7月初旬子供を学校に送り出すため外に出たら、3から4分の間に戦闘機が2機並んでそのあと1機、そして中位の輸送機が2機つづけて飛んでいきました。そのときはさすがにこわいと感じ、八王子市役所に電話しました。
新ガイドラインにもとづく周辺事態法が、今国会で審議されています。先日のアメリカのアフガニスタン、スーダンに対する軍事攻撃など本当におそろしいと思います。


横田に続き5千人で対米訴訟に 嘉手納基地爆音訴訟
7月24日「嘉手納爆音訴訟」の原告団総会が開催され、新たに5千人を超す原告団を組織し、マンモス訴訟を起こすことを決めました。
原告団弁護団から提起されたのは、@これまで一世帯につき一人だった原告を家族、地域に枠を広げ、5千人を超す規模の原告団を結成する。A健康被害の個別立証のため騒音性難聴者を加える。B米国を共同被告にする。―の三本柱。弁護団は「5千人を超す規模だと国に与えるインパクトも大きい。控訴審では認められなかった騒音性難聴者の健康被害を立証し、飛行差し止めに結び付けたい」と語りました。
新訴訟に向けての準備委員会を設置し、各支部ごとに訴訟形態について検討を進め、来年中の提訴をめざします。
5月二重に日に福岡高裁那覇支部で言い渡された控訴審判決は、国に損害賠償を命じましたが、原告側が飛行差し止めの根拠となり得ると主張していた騒音性難聴などの健康被害については退けました。


訴訟団に役立つホームページ散策@
訴訟団事務局  内田 高志

これから何回かに分けて訴訟団に役立つインターネットのホームページを紹介します。
今回は「沖縄タイムスのページ」です。ニュースファイルがあり、嘉手納訴訟の状況や沖縄の基地公害の実態などが沖縄タイムスを購読しなくても知ることができます。
嘉手納訴訟の推移、大田知事の嘉手納訴訟や基地公害に対する姿勢、沖縄の基地問題などが地元の新聞独特のスタンスで報道されています。
沖縄の基地問題の深刻さが理解できると思います。ホームページアドレスは、

http://www.okinawatimes.co.jp/index.html

です。


住民にも深刻な「事態」もたらす新ガイドライン『周辺事態法案』
いま、国会では、アメリカのおこなう戦争に日本も参加・協力しようという「周辺事態法案」の審議がすすめられています。富士山の麓での米軍の実弾演習の際には、米軍の輸送に日本の民間機が使われ、横田基地に飛来しました。弁護団の吉田先生に、ガイドラインや「周辺事態法」と住民生活との関係について書いていただきました。
弁護士  吉田 健一
現在、国会で「周辺事態法案」という法律を作ろうと審議がすすめられています。昨年九月に日本とアメリカで、アメリカの行う戦争や軍事介入に日本も参加、協力しようという約束(「新ガイドライン」締結)がさ、れましたが「周辺事態法」というのは、この約束を日本で実行するための法律です。
この新ガイドラインや周辺事態法が実施されるとどんなことになるのか、横田基地周辺の住民にとっては、どのような関係があるのか考えてみたいと思います。

アメリカへの戦争協力で被害拡大
現在でも、アメリカ軍は、日本の基地からイラク攻撃など世界各地に出撃しています。米軍基地の目的は、安保条約により「極東と日本の平和と安全」に限られていますが、米軍の活動は、その範囲をこえているのです。
新ガイドラインは、基地を提供する以上に、さまざまな協力を日本に求めています。たとえば、飛行機で墜落した戦闘員を救助したり、武器を装備した艦船で威圧し外国の輸送船を停止させて積荷を検査(臨検)したり、相手の攻撃に反撃したり、自衛隊が海外で武力による威嚇や武力行使することになります。
また、アメリカ軍のために、日本が民間の港や空港、新たな施設や訓練場所を提供し、食料や水、燃料を補給したり、兵員・武器・弾薬その他の物資を運搬したり、負傷兵の治療、車両や艦船を修理します。日本の警察が米軍を警備する活動を行います。そのために、周辺事態法案を成立させて、都道府県や市町村、民間業者までかり出そうというのです。
すでに、富士山の麓で米軍が実弾の砲撃演習をするために、沖縄の海兵隊基地から横田基地などを通じて兵員や物資、武器・弾薬が輸送されています。そのために民間のトラックやバス、飛行機が動員され、一般の高速道路を武器・弾薬を積んだトラックが走るという事態も生まれています。
新ガイドラインはのもとでは、兵員・物資の輸送や飛行訓練のために横田基地の使用状態がいっそう激しくなることは必至です。民間の飛行場や港も運用時間が延長されることになっていますので、横田基地の夜間飛行の規制も無視されて、いっそうひどい騒音被害が発生するでしょう。
しかも、アメリカ軍への協力、さまざまな軍事行動を進めるうえで国会には承認を求めなくてよい、事後報告でよいというのです。まさに、自動的に戦争に協力する仕組みが作られようとしているのです。

軍事優先で憲法を無視
何よりも問題なのは、このようにして戦争を実施する体制が作られるということです。アジアの人々からも新たな軍事的脅威を拡大するものだという非難が寄せられています。また、国民にとっても、アメリカ軍の活動や軍事協力が優先されて生活や権利、民主主義や地方自治もないがしろにされてしまいます。これは、戦争を放棄し、軍隊を保持せず、平和のうちに生きる権利を明記した日本の憲法に真っ向から反するものです。
新ガイドラインを具体化し周辺事態法案を成立させようという動きは、平和のもとで静かに生活したいという住民の要求すら踏みにじることになります。
住民の皆さんの切実な要求を実現するためにも、周辺事態法案の成立を許さないことが重要です。


高齢者や孫へのいたわりを国は受け止めよ
〜第8回新横田基地公害訴訟裁判を傍聴して〜
昭島支部原告  上原 英一
「傍聴席は静粛に、拍手などしないように」裁判官の声、7月9日におこわれた第8回裁判で、証人の清水さんが朝6時から夜9時までは飛ばないという合意をふみにじるアメリカを激しく非難、国側代理人に詰め寄った時の傍聴席の反応です。
私は昨年定年退職してから8回の裁判傍聴に行っております。この日の原告本人尋問は、羽村の小林みつゑさん、昭島の坂和みつえさん、瑞穂の清水幸一さんの3人でした。
原告が日常生活をしていく上での具体的な例をあげて基地公害のひどさを訴えているのに対し、国側はいつものとおり「危険への接近」を主張しています。そのうえ、騒音公害を知って在住している人が悪いとでもいう問いかたや、改装した家についての金額まで聞き出そうとしたり、また防音工事でいかに騒音防止の努力を国がやっているかを印象づけようとやっきになっていました。
高齢の両親の面倒を見ながら二世帯住宅にしている若夫婦の怒りの声や、昼寝もおちおちできない孫へのいたわりも、騒音による難聴になった苦しみも、国側はまじめに受けとめるべきです。子供のためにも一日も早く基地公害をなくすため、これからも力を合わせていきたいと思いました。


川崎公害判決日行動に参加して
代表幹事  小板橋 稔市良
8月5日、16年もの苦闘のうえでかちとられた勝訴の歴史的連帯行動に参加してきました。その朝、川崎駅から裁判所への途中、川崎区役所に立ち寄って、深刻な被害をものがたる資料・地図を入手、欠陥道路や産業道路、高速道が縦横に走り、大工場に囲まれた市街を確認、裁判所前の千余りの関係者の中には、われらが中杉弁護士の顔も。さて、判決は、自動車排気ガスとぜん息などとの因果関係を全面的に認め、その被害が「現在進行形」的に続いていること、しかも被害の幹線道路のみならず、市道、県道にそう50メートルにまで救済の範囲を広げるなど、さきの西淀川判決を大きく超える画期的判決だったのです。
排ガス汚染、道路公害に苦しむ全国各地の運動に及ぼす影響ははかり知れない。そこで、各新聞も判決内容を当然とし、原告勝利を好意的に扱い、「排ガスへの叫び届いた」などの大見出しで扱い、同時に「厳しい判決」「完敗」と衝撃を受ける関係省庁、というようなことも書いたのです。
午後から参加者は、9台のバスに分乗、各省庁交渉に。私も環境庁交渉にのぞみました。政府は10年前に「公害は終わった」とし、補償法の指導地域解除を強行しました。
当然、環境庁交渉で、弁護団・原告団からこもごも、血の出るようなするどい追及がなされました。局長・部長以下のお役人は、「一刻も早く再指導を行い、新たな被害者の救済も行なえ」といった要求に、のらりくらりとはぐらかすのでした。やっと「判決は重大と受け止めます」というのみでした。
去る8月18日、国と公団は判決を不服として東京高裁に控訴しました。長い苦しいたたかいの間に、286人の公害認定患者原告のうち、150人以上がなくなっている。いま患者たちの怒りはいかばかりかと思います。
建設大臣は、排ガスと健康被害について、「医学的見地からの因果関係が立証されていない。」とテレビでも語りました。
しかし、裁判所は、NO2や浮遊粒子状物質がぜん息などの公害病を発症させると指摘。数多くの調査研究、最新の国の研究所等の結果まで示して明快に論拠を示しているのです。いまも川崎で、全国で深刻化している道路公害の実態に背を向け、判決が厳しく指摘した国・公団の怠慢にたいする一片の反省もないとの訴訟団の抗議は、あまりにも当然です。再来年には、八王子で判決を迎える予定の新横田基地公害訴訟団も、6月例年の公害被害者総行動での統一行動日1日だけでなく、共闘を強めなければならないでしょうか。
どうもこの国の行政は、やっと国民の生存権、環境権、人権を守ろうとする裁判所に何十年も遅れた認識しか持っていないようです。どうすべきかはあまりにもはっきりしているといいたくなります。


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