新横田基地公害訴訟団ニュース

第24号  (1998年11月27日)
今年最後の裁判!各支部で多くの傍聴者を集め
第10回裁判傍聴の成功を
12月3日の裁判の内容を関島保雄弁護士に書いていただきました。傍聴席を原告でうめつくし裁判傍聴を成功させましょう。
12月3日の証人尋問は日本大学講師の荘美知子先生に証言してもらいます。
荘先生は防衛庁が環境庁方式と異なるWECPNL(うるささ指数)の計算方法を採用することになった研究に従事した方です。
防衛庁方式とは簡単に言うと、民間空港は毎日同じ定期便が飛行するので一日の飛行回数は年間ほぼ同数ですが、軍事空港の場合は飛行回数は毎日一定ではなく、軍事空港周辺の住民調査をしたところ、住民は多く飛ぶ日に「うるさい」と感じるので、一日の平均ではなく多く飛ぶ日の順番で90パーセントに相当する飛行回数をもって年間の一日の平均飛行回数とする方式で計算したものです。そのほか戦闘機など金属音が多いとかに合わせて計算しているので環境庁方式よりWECPNLで4程度大きくなります。これを国は防衛庁方式は環境庁よりも住民のために配慮して住民に有利に取り扱っているためだと主張していますが、そうではなくて、多数飛行するに日に住民が「うるさい」と感じるという科学的調査結果に基づくものであるということを明らかにします。
また外国の航空機騒音規制対策のレベルと比較してWECPNL75は住民が許容できないレベルで住宅建築禁止や防音工事の義務づけなどの対象になっていることも明らかにします。
さらに都内の公団住宅の住民調査によると入居に際して住民は音の問題は重視しないで間取りなどを重視しますが、入居後は音の問題や結露の問題が一番大きな関心になっていて、上階や隣の音が聞こえるか否かが重大感心になっているという結果を明らかにします。
これは国が危険への接近を主張していますが、入居に際しては住民は音問題に対する関心が低いので横田基地の航空機騒音問題に対しては関心を持たないのが普通で、入居してみて初めて騒音のひどさに驚き苦情が大きくなることを明らかにします。また住民は飛行機のような巨大な音ではなく掃除機や洗濯機の音など聞こえるか聞こえないかという低い音でも苦情を主張するという実態を明らかにします。
弁護士  関島 保雄


第二回検証について
弁護団事務局長  吉田 栄士
12月27日午後1時から午後8時まで、2回目の検証を行いました。
今回の検証は基地近隣の昭島市内です。弁護団は20名、修習生も5名参加し、指示説明、騒音測定、写真、住民説明などと各々担当部署を受け持ち、また、原告も多数参加しました。関係者の協力と、当日はC-9という中型ジェット輸送機が訓練飛行を繰り返していましたので、裁判官も騒音体験ができ、検証としては成功しました。なお、現地では本人尋問もおこなわれ、本人尋問はこれで16名になりました。
この日、裁判所として確認、認定できた(裁判官が体験し、測定がなされた)飛行回数は、7時間で23回です。それ以外にも移動中とか、測定不能とかもあるので、回数そのものはもっと多かったと思います。
機種の大半はC-9で10回、そのほかC-130というプロペラ中型輸送機が3回、ヘリが7回などで、もっともうるさいC-5AやC-141は飛来しませんでした。最大騒音は、例年横田平和まつりをしている堀向児童遊園での98.5デシベルでした。
今回は検証らしい検証ができたと思います。次回は来春の八王子・日野地域です。今回に負けない態勢を取って、裁判所に被害実態を経験してもらいましょう。
3日の現場検証の各検証場所についての概要は以下のとおりです。
<昭島市役所>
昨年完成した新庁舎です。ここでは、国は会議室での防音施設の実態、原告側は屋上から原告の居住地域、飛行コース、被害状況などを説明しました。市役所は新しく防音設備も整っており、確かに会議室での防音効果は認められました。しかし、市の市民センターなどではこのような防音設備はありません。屋上からは多摩川を境に八王子の原告の居住している小高い丘もよく見え、検証中もC-9が飛来し、飛行状況の説明もできました。

<宮沢町・市民宅>
ここは国の申請で、一般住宅での防音工事、防音効果を検証しました。たまたま、この時間帯はあまり飛来しなかったので、防音効果についてはよく測定はできませんでした。

<立川・中里(原告森田宅)>
基地南側フェンス越しに、滑走路の状況や基地内の施設を見てもらいました。ここから森田宅は120メートルほど。森田さんは法廷で被害のすごさを証言しております。裁判官に滑走路のすぐ横での騒音下の生活のすさまじさを経験してもらいました。この検証時から、C-9の継続的な訓練飛行が始まり、短い時間内に4回飛来しましたのでよく実感できたと思われます。一度は外に出たところでしたので、大きな機体が森田さんの屋根をかすめるように着陸する様子を裁判官は体感しました。

<堀向集団移転跡地>
堀向児童遊園から集団移転跡地を歩き、拝島二小へのコースです。今回の検証のハイライトコースでもあります。児童遊園についたとたんに、頭上をC-9が通りました。このときの音量が最高値でした。裁判官もこれには驚いたようでした。移動中ヘリも含め八機が飛来し、裁判官はその都度見上げるとともに、足早にこの地から移動したというのが印象的でした。100デシベル近い音量の飛行をここでは4回体験できました。

<拝島第二小学校>
薄暗くなりかけた4時40分から始めました。 この学校は飛行コースの真下にあり、騒音の直撃を受けている学校です。屋上には昭島市の測定機が設置され計測されています。屋上から基地との距離や飛行コース、居住地域などを説明しましたが、折りよく、2回、C-130が飛来しました。暗くなりかけていましたので、ライトがだんだん大きくなり、すさまじい轟音とともに頭上を通り過ぎる様子を体験できました。指示説明していた若手弁護士も初めての経験で身震いがする思いだったと感想を述べています。

<田中町(原告萩原宅)>
ここでは居住状況とともに萩原信子さんの尋問をしました。
萩原さん宅は今年に3月に防音工事をしましたが、この防音室のリビングを法廷の代わりにして尋問をしました。尋問担当者は法廷と違い、裁判官もニコニコして話を聞いてくれていたのが印象的だったと感想を述べています。窓からみてどんな風に飛行するのか、という質問中に、真っ暗な空からライトを照らしてC-17が飛来し、萩原さんがそれを指し示しながら説明するという場面もありました。


現場検証随行記
昭島南部班  金沢 祐三
27日の現場検証は、真夏のような陽を浴びた2日前とは一転冬支度の陽気でした。それでも所々の菊、山茶花、コスモスが咲き、つつじも花を持ちそれを見ながら昭島だって捨てた物じゃない、そんなことを思いながら回ってきました。
田中町住宅からは男性6人、女性6人、計12人が参加しました。会社を休んだ方4人、昼休みを1時間延長して駆けつけてくれた方2人「何とか裁判長に私たちの置かれている状態と思いを伝えたい」という意気込みを感じました。
前回の北側現場検証のときは「何でこんなに飛ばないのか」と悔しい想いをしました。今回は午前中にギャラクシーが飛んでしまいましたがC-9が全く無遠慮に飛びまわり最高97dbの騒音を轟かせていました。
市役所の会場でも爆音を体験していただけ、立川の森田宅は窓すれすれに飛行するすさまじさでした。そんな中でも森田さんは花、木を育て、素晴らしい菊を作り上げていたのが印象に残りました。こんな自然環境を破壊しようとする米軍機、それを益々強く感じたのは堀向地域でした。500世帯2000人が集団移転されて、西部劇の廃墟を思わせる旧街並みを歩いたときでした。国側代理人は裁判で我々にかならず「何でこんなところに住んでいるのか」といいます。首都東京を廃墟にするつもりなのか、腹が立つことしきりでした。
拝島第二小学校では先生2人が裁判長に直訴を願いました。その気持は伝わったろうと思います。人間の作り出したものは人間の手でしか解決できないそうです。私たちが裁判を闘うことによって大きな世論にしていくためにもこの裁判にかならず勝利していきたいと思いました。


嘉手納爆音訴訟のシンポ レセプションに参加して
弁護士  中杉 喜代司
一、沖縄嘉手納基地爆音訴訟は、本年5月22日、福岡高等那覇支部で二審判決がありました。この判決では早朝夜間の飛行差し止めは認められませんでしたが、旧横田訴訟以外では初めてW値75に至まですべての騒音地域で損害賠償請求が認められたほか、横田では阻止できていない「危険変接近」法理(基地周辺がうるさいのを知りながら転居してきた原告には、損害賠償を少し減額するという考え方)による損害賠償の減額を認めさせないなど、これまでの判決を一歩前進させる内容となっています。
嘉手納訴訟は、原告住民・被告国とも上告せずに、このまま判決が確定して終了しましたが、今後は新横田訴訟のように多くの原告を募って大規模な新嘉手納訴訟を提起することが検討されています。

二、そこで嘉手納訴訟団では、訴訟の終了と新たな訴訟を目的として10月24日嘉手納基地近くの沖縄市でレセプションを開催しました。レセプションには新横田、厚木、小松の各基地弁護団や全国公害弁護団連絡会議などから多くの人々が参加しました。
新横田では、弁護士4名のほか、新訴訟団八王子支部の良岡さんが参加され、新横田訴訟を提起するまでの経験を報告され、これから新訴訟を目指す嘉手納訴訟団の方々とも大いに話し合いました。

三、このレセプションに先立って、騒音問題に携わっている学者、医師、弁護士らによる講演とパネルディスカッション「疫学的立証の課題と今後の展望―聴力損失を中心に」が開催されました。
まず、最初に武庫川女子大学教授の平松幸三先生が平成7〜10年の間行われた沖縄県の「航空機騒音による健康影響長さ」について、その研究成果を講演されました。
平松先生は、昨年新横田訴訟のシンポジウムでも講演していただいています。
この調査では、航空機騒音による難聴の患者が11名も確認されたほか、騒音地域の出生時の体重が軽い傾向にあること、幼児や児童に対する騒音による影響など次々と重要な調査結果が報告されました。
続いて、小松訴訟団長である谷口堯男医師により、小松基地周辺での被害調査報告がなされました。
最後に、嘉手納弁護団の森下弁護士より、嘉手納訴訟についての講演があり、パネルディスカッションに移りました。ここでは、新横田弁護団からも関島保雄弁護士がパネラーとして航空機騒音による健康被害をいかに認めさせていくかにつき、熱心な討議が行われました。

四、また、この会には、長田泰公元国立公衆衛生院長や山本剛夫京都大学名誉教授をはじめとする我が国の騒音学会を代表される先生方もご出席され、非常に中身の濃い会となりました。シンポジウム、レセプション終了後も、訴訟団、学者、弁護団の方々が泡盛を飲み、沖縄民謡を聞きながら、夜遅くまで今後の運動について大いに話し合いました。


沖縄・嘉手納基地爆音訴訟
「健康に関するシンポジウム」「謝恩レセプション」に参加して
八王子支部  良岡 理一郎
10月24日〜25日に沖縄市(旧コザ市)で開かれた「シンポジウム」「レセプション」に新横田弁護団からは吉田(栄)、中杉、席島、加納の4弁護士が参加され、訴訟団を代表して私が参加してきました。小松基地弁護団、厚木基地弁護団からも参加されていました。今回の「シンポジウム」「レセプション」は16年間にわたって闘われた嘉手納基地爆音訴訟の一応の終結を記念して開催されました。
ご存知のように嘉手納基地爆音訴訟は本年5月22日に控訴審判決が言い渡され、原告、国双方が上告することなく判決が確定しました。判決は、損害賠償の対象地域に75W地域を含め、かつ賠償額を引き上げたこと、同時に国側の「危険への接近」による賠償額引き下げの主張を退けたことなど全国の基地公害訴訟の運動を大いに励ますものでした。
一方、「飛行差し止め」「将来の損害賠償請求」「米軍機による健康被害」については認められませんでした。
「航空機騒音の健康影響に関するシンポジウム」では沖縄県の調査に参加された武庫川女子大学の平松先生から「嘉手納基地の航空機騒音で聴力障害が発生している」ことについて県調査の詳細なデータを使った報告がされ寺井病院の谷口先生からは小松基地周辺での医学調査の報告がなされました。医学調査はテーマ別(保育園児の問題行動、高血圧有病率、聴覚検診など)騒音地域と非騒音地域に分けて実施され、騒音レベルが上がるほど被害が大きくなるとの結論が報告されました。弁護士の森下先生からはこの間の全国の空港・基地騒音公害訴訟判決の認定内容について説明がされました。
その後パネルディスカッションに移り、「航空機の健康被害」をテーマに医師、学者、原告の立場から活発な意見交換がなされました。パネルディスカッションでは「健康被害にこれだけ行政・専門家が調査証明しているのに裁判官はもっと勉強すべき」「各地の基地訴訟では行政・専門家などとも協力しながら健康調査をしていこうではないか」などの発言が印象的でした。
夕方からはレセプションに移り嘉手納基地爆音訴訟団、弁護団からのあいさつ、経過報告がありました。また、副知事、国会議員、訪米団の弁護士など多彩な方々の激励、連帯のあいさつがありました。新横田の弁護団、訴訟団からも。連帯のあいさつをしました。レセプションでは沖縄の芸能もたくさん披露されなごやかなものでした。
嘉手納基地爆音訴訟団は一旦解散し、今、次の訴訟に向けて準備会が結成されつつあります。次の裁判では、次のことが検討されています。

1.原告団は家族の参加も含め4000〜5000名をめざす。
2.新横田訴訟と同様、アメリカ政府も被告とする。
3.1999年夏から年末にかけて提訴する。

今回、現地を訪問できる機会を与えていただいた弁護団、訴訟団のみなさんに感謝申し上げます。大変勉強になりました。ありがとうございました。


静かな眠れる夜を求め 弁護団と原告9人が訪米
国際民主法律家協会の呼び掛けで、新横田基地公害訴訟団の願いである「静かな眠れる夜と住みよい生活環境」を求める訴訟団の運動をアメリカ国民に理解してもらい、アメリカ政府を東京の裁判所に出頭させるべく、10月16日から24日榎本信行団長以下弁護団4人、原告5人が訪米しました。全国の基地訴訟関係者、学者など総勢32人の一行でした。
訪米の成果、経過報告は、次号以降のニュースでお伝えします。
また、12月3日に開催される訪米報告会には、報告集を配布する予定です。


↑UP ←BACK  NEXT→