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第26号 (1999年 4月 7日) | |
各市町長への協力申し入れはじまる 東京都知事選挙、各候補者への公開質問状に回答がよせられました |
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代表幹事 大野 芳一 | |
裁判は、提訴してから3年で今秋結審、そして来年判決という状況まで進行してきました。 そこで、今後の運動の在り方について、昨秋より幹事会で検討を重ねてきた結果、「勝利に向けて尚いっそうの頑張りが必要」と判断しました。 まず、地方自治体の皆さんに裁判の状況を知ってもらうこと、自治体として住民の被害救済をどのようにすすめられるのか、また、基地被害を恒久的にどのように解決していったらよいのか等々、率直な意見交換をはかるべきだとの意見の一致をみ、各支部所在の自治体に対し3月中に申し入れをおこなうことが確認され、各支部で取組を始めました。 主な申し入れのポイントは次の通りです。 (1)各市・町長との訴訟団、弁護団との懇談会 (2)横田基地に関する東京都と五市一町の連絡協議会の組織化。 (例 日野、八王子市の連絡協議会への加盟促進など) (3)同連絡協議会として「健康被害の実態調査」「環境影響調査」の実施、および国、米軍への騒音軽減対策の改善の働きかけ等。 (4)その他 このほか東京都知事選挙の各候補、明石康、石原慎太郎、柿沢弘治、鳩山邦夫、舛添要一、三上満の各氏に対し「公開質問状」を送り、明石、石原、柿沢、鳩山、三上氏より回答が得られましたのでニュースに同封し別紙の通りお知らせいたします。 |
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荘美知子先生の法廷での証言 | |
弁護士 犀川 治 | |
昨年の12月3日と今年日2月4日の2回にわたって、原告申請の証人である荘美知子先生(日本大学講師)への証人尋問がおこなわれた。 荘先生は、航空機騒音の問題の専門家であり、近頃は、マンション等の騒音環境問題の第一線の研究者である。今回の証人尋問は奇しくもその二つの研究についておききすることとなった。 まず、基地周辺の航空機騒音については、被害の大きさを表す指標であるWECPNLという評価基準をいかに裁判所に理解させるかということが課題となった。 「W75」地域などというときの「W」がこれである。この評価基準の理念をやや乱暴にいえば、「人間が〈うるさい〉とおもう感覚は単純に音の大きさや飛行回数の平均では計れず、むしろ〈うるさい〉と思う音〈うるさい〉と思う印象によって決定される。だから、その〈うるさい〉と思う感覚に合わせて、騒音被害基準を作ろう。」というものである。たとえば、借金取りが一日に10人押し掛けてきた次の4日間、借金取りが1人もこなかったとしても、10人の借金取りに押しかけられて困った、また来たらどうしようと怯えるのが通常の感覚であり、一日平均2人来る借金取りにのんびり対応していればよいだろうなどは思わない。そういった「感覚」を大事にしたW値の理念が正しいことを、住民の被害調査に基づいて実証したのが荘先生の研究である。 国は、自らが作ったWの線引きである「コンター」が妥当でないとか、そもそもWECPNLという基準が妥当でないとかいう主張のもと、荘先生に反対尋問をしたが、先生の明確な主張の前にあっさりと引き下がった。 もう一つの柱は、集合住宅の住民に対するアンケート調査に関する尋問である。先生の調査によれば、家に入居するときの条件としては、「間取り」「日当たり」が第一位を占め、「遮音・防音」は11の回答項目のうちで九番目である。しかし、入居後の改善希望点を調査すると、同じ11の回答項目のうち「防音」が断然トップになる。 この調査結果についての先生の証言によって、「防音・遮音」といった騒音の問題は入居時には分からず、住んでみて初めて分かるものであるという事実が実証された。 国の主張している「危険への接近の理論(=原告のみなさん、横田基地の騒音を知って引っ越してきたんじゃないの、だからその騒音による被害なんて言いなさんな、という理論)」は全く根拠がないということが荘先生の証言によって立証されたのである。 先生の尋問担当である関島、中杉、加納、犀川の4弁護士と荘先生との打ち合わせは、昨年の9月から始まり計12回に及んだ。その度ごとに先生は「欧米の騒音基準は、いかに騒音被害をなくすかという政策のために生かされている。日本の騒音基準は、被害者のための政策に全く生かされていない。」とおっしゃっていた。 その言葉を聞くたびに、損害賠償額をいかに少なくするか、ということのみを考えている横田訴訟における国の姿勢を思い浮かべ、そんな国の言い分を認めさせてなるものかという思いをもった。 今回の荘先生の証人尋問は、原告である訴訟団の皆さんにとっても、そして、横田弁護団一年目の私にとっても、意味深いものであったと思うのである。 |
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国は損害賠償について敗訴を覚悟 | |
弁護団事務局長 吉田 栄士 | |
2月4日の裁判の終わりに、国は国側の証人は立てないと明言しました。これまでの騒音裁判で、国が証人を立てなかった例はありませんでした。国は、この訴訟で初めて証人申請を断念しました。証人を出しても裁判に影響がないからです。 2月25日の裁判準備手続きで、国はあらためて、損害賠償について勝てないと言いました。これからは、いかに賠償金を少なくするかを考えるそうです。しかし私たちの要求は、賠償としても最低限のものです。請求どおりの判決を目指します。 国が証人申請をしないことによって、さらに裁判の終結が早くなります。最後の山場である3回目の検証は、八王子・日野です。期日は7月6日とやや遅れましたが、今回は八王子の飛行直下の宇津木台団地と日野の旭丘の2ヶ所です。宇津木台団地は八王子の運動の中心地で、公団が飛行直下の山を切り崩して大団地を作り、都内の多くの市民が騙されて入居した実態をあばきます。日野では、幼稚園から大学までの教育機関、障害者施設が飛行直下地域に林立している実態を裁判官に歩いてもらい実証します。検証が終わると、いよいよ結審間近です。夏は最後の合宿をして最終の準備書面作りをします。 アメリカに対する裁判は、最高裁への運動が決め手になります。国に対する裁判は、損害賠償だけでなく、夜間の飛行差し止めへも主力を注いで、今年は勝利に向けて全力で弁護団もがんばります。 いよいよゴールが見えてきました。引き締めて、引き締めて、なお一層の努力をして、全面勝利を目指しましょう。 |
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裁判傍聴記 | |
―群馬県へ岩委員会の横田見学会参加者より― | |
▼傍聴人の多さに驚きました。やり取りが聞こえにくいこともあり、内容が分からなかった点もありましたが、国側は住民のことをはじめから理解しないような気がしました。 | |
(伊勢崎市 小保方 直行) | |
▼騒音問題は身近に大きな問題としてなかったのですが、群馬県の相馬が原自衛隊がヘリの旅団化になることでの反対運動がはじまり、人ごとではないことになりました。(日本の基地の問題は日常的に問題意識は強く持っており人ごととは決して考えていないのですが)今日、横田基地を見、裁判を聞き、人が平和におだやかに生きるということを考えさせられました。音も、その他の環境も、すべての今生きている人が意識しなければ、幸せに生活することはできないのです。 基地が見える高層の住宅地を案内していただいて裁判所まできましたが、これだけ悪環境を受けたり、苦しめられているのに、なぜみんなもっと怒らないのか不思議でなりません。 |
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(高崎市 根岸 尚代) |
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新俳句人連盟、同多摩支部同人横田を詠む | |
・冬晴れや 基地指す彼の 髪舞たち (石川貞夫) ・基地どこまで 案内の指呼の 北風ざらし (田辺レイ子) ・爆音垂直難聴 となる冬薫 (遠藤のり子) ・大寒晴れ 基地臨戦の 煙上ぐ (谷山花猿) ・若菜摘む カリフォルニア州 イン横田 (荒井まり子) ・北風透くや 基地のフェンスの 中も首都 (荒井 孚) ・葱畑の校庭びびび 米軍機の尻 (岡崎万寿 ・鉄条網にからめて 日本の寒椿 (井上幸男) ・身体髪膚基地に 逆立つ冬の日や (和田つねお) ・基地冬芽「夜を返せ」の被害地図 (岡崎万寿) |
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(1999年1月31日) | |
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