新横田基地公害訴訟団ニュース

第33号  (2000年 9月13日)
結審は今年末か来年始め
弁護団事務局長  吉田 栄士
一.9月8日に、裁判の進行協議の準備手続きを行いました。
その協議で最終裁判(結審)の見通しがたちました。
前回準備手続きの6月22日以降、国はやっきになって裁判を遅らせる戦術をとってきました。
この間、遅延策についての論戦をしてきましたが、この論戦の中で国のねらいが見えてきました。
国のひとつのねらいは「危険への接近」法理による損害賠償金の減額または免責です。
ただ、具体的に誰がこれにあたるのか言ってきませんでした。
それに加えて、もっと根本的なねらいが明らかになりました。
それは、被害地域そのものを縮小する「新コンター」構想です。
国は損害賠償は認められても仕方がないと、常々言い続けてきましたが、被害地域そのものを変えるという「新コンター」構想を出してきたのです。

二.国が原告の居住問題について、これまでと異なり何ら協力しない態度をとっていること、危険への接近についても先送り先送りにしてきていたこと、これは、新コンター作りと結びつけるとよく理解できます。
国はコンターを変えることによって、被害を「形式上」なくして、その上で判決を取る、このような考えでこの終盤戦をのぞんできたのだと思われます。
国は、裁判で、「新コンター」構想を述べるだけでなく、周辺自治体にその構想を提示しました。
しかし、周辺自治体はこぞってこの構想に大反対をしています。
国のねらいは、住民や自治体の反対で、思うように運べるわけはありません。
実際、被害そのものはそれほど変わっておりません。

三.このような中で、9月8日の協議がなされました。
この協議で、国の危険への接近問題は、一応今回で終了すること、10月末までに原告の居住問題は原告が資料を提出すること、国の防音工事問題についての主張も10月末までにすることが決められました。
すなわち、結審時に提出する最終準備書面以外のものは10月末までに終わらせることになったわけです。
次回の協議は、11月8日ですが、このときに実際の結審時が決められます。
おそらく今年末か、来年始めになると思われます。国も、新コンター構想で裁判を引き延ばすことはもはやできないとみたようです。

四.いよいよ、最終盤ですが、最終準備書面作成のための準備については、弁護団も怠ってはおりません。
7月末と9月始め、弁護団は合宿を行い、すでに作成段階に入っております。
今後、原告の住民票を取り寄せ、整理などの作業をしますが、なにぶん、原告数が多く、修正事項も多くでてくると思われます。
この作業には原告の皆さんの協力が必須です。これが終えたら、裁判も終わります。ぜひ、弁護団、訴訟団、一丸となってこの終盤の課題を乗り切ろうではありませんか。


勝訴に向け署名を広げ「つどい」の成功を
国の裁判引き延ばしは、9月8日行われた「裁判準備手続き」のなかで限界に達したようです。
しかし、「新コンター(線引き」作成を持ち出し、損害賠償の減額を執拗に追及してきたことからみて、大規模訴訟対策の決め手と考えていることがうかがえます。
基地被害を放置している国のこのようなやり方を許しておくことはできませんし、裁判所へ与える影響も見逃すことはできません。
このような状況の中で、真に被害住民の早期救済となる勝利判決を獲得するために、私たちには最後の大きな仕事が残されています。
あらためて被害の実状と訴訟の意義を広く多くの人に訴え、理解と支持・支援を得て、裁判所へ伝えていかなければなりません。
そのため、「早期被害救済を求める」署名活動を開始し、毎月裁判所へ署名を届けること。
また、多くの人に知ってもらうため『「静かな夜を返せ」新横田基地公害訴訟支援秋のつどい』を開催し、大きく成功させることが絶対必要です。
きわめて短い期間で成果を出さなければなりません。
団員一丸となって成功めざしガンバって取り組みましょう。


9月27日全国公害被害者総行動デー
〜 基地公害の根絶を求めて参加しよう 〜
公害問題は深刻です。大気汚染、自然環境破壊、ダイオキシン、環境ホルモン問題、さらには地球温暖化と、もはや抜き差しならないところまできています。
わたしたち新横田基地公害訴訟団も全国の公害被害者たちとともに、騒音被害救済、夜間の飛行差し止めを求めて、年に一度、政府関係機関への交渉や街頭宣伝、決起集会などに参加してきました。
尼崎の道路公害裁判では、これまでの判決から一歩踏み込んだ規制判決が出されました。
わたしたちはこの流れを一層加速させるため、この統一行動を通して行政側に、その対策と規制実施を迫ろうではありませんか。
9月27日は環境庁長官交渉、デモ(正午日比谷公園霞門集合)、各省庁・企業交渉が行われます。
この中で新横田基地公害訴訟団・弁護団は、環境庁長官交渉・外務省・防衛施設庁交渉を行うことになっています。
なお当日、これに先駆け当訴訟団は、午前11時、東京都庁を訪れ、横田基地の軍民共用反対署名を都知事に提出する予定です。
夕方6時からは文京シビックホールで開かれる総決起集会に参加します。
総行動翌28日は、早朝宣伝のあと財界・企業交渉、文部・運輸省交渉などが予定されています。多数の参加を期待します。


生まれて初めての法廷
福生支部  針生 栄子

約4年半前、新横田基地公害訴訟の話があり、大勢の人とともに、私も原告になりました。
裁判が始まりましたが、裁判所へ行くのは特別な人で、私のような者が行くところではないと勝手に決めていました。
その反面、人任せも失礼だし、少しミーハーの私は機会があったら裁判を覗いてみたい気持ちもありました。
6月、はがきが届き、本人尋問の裁判が始まるとのこと、近所の人に声を掛けたら、一緒に行きましょうと言われて、傍聴に参加することにしました。
当日、開廷の時間まで四階の廊下で待っているとドアが開き、「みなさん法廷に入ってください」と言われ、中に入り初めて見る法廷内は、ニュースで見るのと同じで、ちょっと興奮気味になりました。
全員が席に着くと、「ポン」と音がして正面の扉が開き、黒装束の裁判官、裁判長が入廷し、全員起立、「はじめます」と裁判長の第一声。
国側の弁護士が原告への尋問が始まり内容は、「何でこんな質問するの」(数十年前のことや、なぜ引っ越しを繰り返すのか、なぜこの土地に住んでいるのかなどプライバシイをねほりはほり聞き出していた)証人の方が気の毒に思えてきました。
この裁判でそろそろ終結と聴きました。
縁があって住んでる土地です。
少しでも騒音のない静かな、住み良い街にしてほしいと願っております。


 

絶対反対『新コンター』
横田基地周辺市町基地対策連絡会
去る9月1日、横田基地周辺市町基地対策連絡会は「横田飛行場周辺の騒音度調査結果に基づく第一種区域指定等の見直しについて」の要望書を提出しました。
東京防衛施設局から提示された、75から95WECPNLまでの「新コンター」に対する見解を示したものです。
この中で、周辺市町基地対策連絡会は、住民にもっとも影響のある75WECPNL以上の部分が大幅に狭まっている「新たなコンター」を到底承服できものではないと言っています。
また、日常の市街地上空での旋回飛行、あるいは度々の、艦載機によるNLPの実施なども十二分に考慮すべきとしています。その上で、次の二項目について要望しました。

一.現行の指定区域が縮小されるような指定区域の見直しについては断固反対します。 縮小されることのないようにされたい。

二.この際、見直しに当たっては、70WECPNLまで対象を拡大されたい。なお、70WECPNLの区域図を示されたい。


横田/沖縄 交流平和ツアー
八王子支部  小板橋 稔市良
7月1日、基地永続をはかるGエイトサミットをひかえ、読谷村で市民レベルの平和サミットが開かれた。
沖縄のガンジーともいわれ、銃剣とブルドーザーの米軍による土地接収、基地建設に非暴力の農民による抵抗の先頭に立ってきた阿波根昌鴻氏らの「わびあいの里」主催の集会は全国から800名の参加で盛況であった。
太田前知事、平岡前広島市長、ひめゆり学徒隊の語り部宮良さん、山内前読谷村長といったパネラー。
筑紫哲也氏の司会のもと、私たち23名が参加し、平場からの討論ではトップに指名された飯能の菅間夫人が堂々と横田を代表するあいさつ発言。
挙手し続けるも他は発言の機会がなかったのが残念だったが、パネラーや主催者には、横田訴訟の現状などの資料や、参加者署名の連帯の旗を贈呈し、感謝された。
太田前知事の県民の立場に立った、代理署名拒否などの在任中の歴史的な基地被害の解消をもとめる対応と、その間の残念なゆらぎと苦悩、読谷村の基地の中に役場や文化センターなどの施設を建設する平和運動の理念、民衆の知恵と力の粘り強さとユーモアあふれる報告、学び・考えさせられることが多かった。
2日目、『本物の反戦地主』、私たちとは訪米活動で親しい島袋善祐氏と沖縄母親大会の仲杉泰子さんらとの懇談、3日目の北谷町砂部公民館での嘉手納訴訟団との交流会もまた、本当によかったと思う。 砂部では、いっぱい写真、図表、展示資料を用意し、熱心、懇切な説明もいただいたが、その後の名護の視察予定もあり時間不足が残念至極であった。 
嘉手納の人々はサミットに際し世界に「基地の中にある沖縄」の現状を訴える7月20日の嘉手納基地、2万7千人の「人間の鎖」包囲行動の成功に大きな貢献をするのである。
辺野古の美ら海・ジュゴンを守る運動、命を守る会との熱い連帯握手もすばらしいことだった。
ツアーを通じて、私は全国と沖縄の平和運動の発展が、日米両政府の基地対策のゆきづまりに、何らかの変更を迫るものがあると確信するに至りました。


基地被害で街が消える
昭島支部  松井 登志子
平和ツアー3日目に新嘉手納基地爆音訴訟原告団との交流会が、砂部の公民館で行われました。
たくさんの資料が用意されていて、その前で、お互いに被害の状況などを報告しあいました。
公民館のある砂部では、爆音公害が特にひどく、高血圧、女性の生理異常の多発など、住民は健康被害でいたたまれず、現在もあちこちで移転を余儀なくされています。
歯が抜けたような町の様子は、ちょうどベトナム戦争当時の堀向地区の状況と全く同じでした。
横田もそうですが、基地からの公害発生はあらゆるところに及んでいると今回参加してつくづく実感しました。
沖縄は海に囲まれているため、飛行機、戦車など塩害防止のため、洗浄に貴重な水が多量に使われるだけでなく(ヘリコプター一機で4トン以上の水)、多量の溶剤洗剤が使われ、そのまま海に放流されるため、海の汚染は深刻です。
地球の汚染防止のためにも「基地はいらない」の思いを強くした平和サミットでした。


ひめゆり部隊最期の地にて
福生支部  片桐 善衛
数年ぶりの沖縄、それは私に何を与えてくれたのだろうか?
人間と歴史との邂逅だろうか。
今回ひとつをあげろといわれれば、糸満摩文仁の西方・荒崎海岸だろう。
初めて訪れたこともあるが、目の前の碧い海と背景の緑の間にある脚と身体を傷つける岩場、その一角でひめゆり部隊の生き残った乙女たちが引率教員とともに最期を迎えた。
その場所は沖縄の自然があまりに美しく、当時の悲惨を極めた状況に思いをはせるには正直言って難しい。
私にはその場所の足元に眼をやることで、せめてもの追悼の気持ちを伝え、あらためて非戦の誓いをする場所であった。


訪米成果のひとつ実らせたい
昭島支部  堀 美保子
1998年10月、私たち(山本弁護士・松井・後藤・堀)は新横田基地公害訴訟団の弁護士・原告として訪米のおり、思いがけず、ベアテ・シロタ・ゴードンさんにお会いすることができました。
ベアテさんは、私たち女性が基地騒音から生活権を護るための訴訟運動を担っていることを大変喜んでくださいました。
「憲法の男女平等を書いたことが生きている」「日本の女性が実行委員会をつくって私を呼んでくれるんですよ。それで、私は日本中北から南まで行きました。日本の女性が生き生き活動している姿を見るのが一番うれしい」とおっしゃって。  私たちはその時、ベアテさんを多摩にお招きすることを約束しました。 今年5月、参議院の憲法調査会に証人として招かれたベアテさんと再会することができ、このイベントが決まりました。 去る、8月19日(土)には第一回実行委員会をスタートさせました。
実行委員一同、1200人の会場を満員にしてベアテさんをお迎えしようと張り切っています。 どうぞ、お力添えください。


一日も早く静かな空を
被害指定地域外(コンター外)の入間郡三芳町に住む武田さんから、「訴訟団ニュース」を読んでの感想が届きました。一部ですが、ご紹介します。
昨年の合同演習ほどではなくなりましたが、3月はじめから、月の三分の一くらい、早朝から深夜まで(昼は3分おきくらいに低空飛行がある)、騒音がひどい日があり、飛行の様子や時間などを表にするようにしています。
私の夫はこの土地で生まれ、育ちました。 
つい最近まで、純農村地帯だった静かな街を離れることはできません。
それが唯一の方法であったとしても・・・基地周辺の方々の苦悩の深さは私たちと同じものとして、心が痛みます。
一日も早く静かな空が戻ってくることを祈って止みません。
嘉手納基地包囲行動に参加して
昭島  清水 多恵子
7月17日から「基地包囲」の20日まで旧友三人で沖縄に行きました。
那覇についてすぐ、読谷村見学ツアーに幸いにも便乗。
那覇、浦添、普天間、嘉手納と延々と続く米軍フェンス沿いに走り、99年に軍用地の中に完成した村役場へ。 
「米軍と粘り強い交渉で体育館を、次に文化センターも建設した」と語る課長さんの誇らしい顔。
ほんとに元村長の山内徳信さんはあっぱれな人。
他に返還地に作られた陶芸の里や無農薬ゴルフ場(利用者は村民)などすべて住民参加で管理運営しているとのこと。すばらしい。
18日は朝から「ピープルズ・サミット」に参加。
比・台・印・英・米からの参加者があり興味深かった。
私も横田基地の人権侵害などを訴え「意見広告」を手渡した。
翌日もサミット本会議場近くで、ギャングG8ならぬ文化人8人によるシンポジウムがあり、終了はよる7時。 会場の名護よりバス2時間で那覇に戻った。
いよいよ20日。警備厳重な首里城近くのホテルをあとに嘉手納基地へ。炎天下「基地をなくせ!平和な島を返せ」の声が、2万7千人の手が、基地を二重に取り巻き、エイサーのリズムに乗せて世界にアピールした。


ありがとうございました
早期結審・公正裁判を求める要請署名 15,8488筆
軍民共用空港化反対署名 33,317筆
なくせ公害、守ろう地環境対政府署名 5,124筆

公正裁判要請署名は目標数1万を超えて、数度にわたり東京地裁八王子支部に提出してきました。
軍民共用空港化反対署名も3万筆を超え、未提出の分は全国公害被害者総行動にあわせて、東京都知事へ提出します。 省庁に向けての要請署名も集まってきています。
これは支援団体の協力のおかげです。感謝しております。 また、訴訟団の皆さんの奮闘によるものです。
訴訟団事務局長  遠山 陽一
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