新横田基地公害訴訟団ニュース

第42号  (2002年4月16日)
原告は一丸となって
弁護団事務局長  吉田 栄士
ようやく、東京地裁八王子支部の「国に対する裁判」の判決日が指定されました。
3月の小松基地訴訟判決に続く大型訴訟判決で、米軍基地では最初の判決です。
この6年間、頑張ってやってきました。その成果を今度の判決が示してくれると思います。内容的に評価された小松基地判決を上回る内容を期待しています。判決を迎えるにあたり、一番大事なことは訴訟団が一丸となって判決に立ち向かう事です。そして判決後どうするか、意思を一致させておくことが大切です。
4月12日、最高裁で「アメリカに対する裁判(対米訴訟)」の判決が言い渡されました。外国政府を相手とする初めての最高裁判決でしたが、残念ながら上告棄却でした。
米軍の活動は米国の「主権行為」だから裁判することは出来ないとされました。
しかし、私たちの請求は今認められている日米合意の制限時間(夜10時から翌朝6時)を1時間ずつ延長して欲しいというものです。
決して米国の主権を害するものではありません。
最高裁判決は不当な判決だと思います。
二次、三次の対米訴訟はこれからです。
上瀬谷通信基地訴訟、嘉手納基地訴訟もあります。
今後とも対米訴訟については裁判所に門戸を開かせるよう頑張ります。


勝利を期して
八王子支部
1996年4月の第一次提訴以来、およそ六年を経てやっと一審の判決日を迎えることができました。もっと早い解決を想定していただけに感無量のものがあります。
今回の裁判に八王子市から約2300名の住民が原告として参加しています。
宇津木台地域を中心に自治会・町会の「米軍機の騒音を何とかしてほしい。解決してほしい」との住民要求が公害訴訟運動に発展し、会員の三分の一以上の方が原告として参加している自治会・町会もあります。
この間の国側の裁判引き延ばしを主眼とする主張には、いったい日本国政府は日本国民と米軍の利益のどちらを守ろうとしているのかと怒りすら覚えました。
法廷や現場検証、署名などを通して、私たちの願い「静かな眠れる夜を」は大義・道理を得ていると裁判所に理解していただけたものと確信しています。 そして、私たちの要求に沿った判決を期待します。
判決日には原告はもとより、運動に関心をお持ちの多くの方に参加いただけますよう、取り組みを強めていきたいと思います。


一審判決をバネに「夜間飛行差止」実現を前進させよう
いよいよ6年間の運動の成果を確認する日がやってまいりました。
対米訴訟への取り組み、軍民共用空港化反対・裁判所への署名活動、そして、支援・協力の運動の輪を広げる「秋のつどい」など「静かに眠れる夜を取り戻す」ため原告は団結して頑張ってきました。
しかし、4月12日の最高裁判決は「被害救済」に背を向け、私たちの期待を裏切る不当な判決で、国民の司法への不信を募らせるものでした。そうした意味で憲法の言う「人間らしい環境のもとで生きられる」ようにするため、国の行政としての責任がますます重く問われるようになってきました。
きたる5月30日の「国に対する裁判」で裁判所が国の基地対策をどのように裁くのか、また、被害救済をどのように果たそうとするのか、一人でも多くの参加で確認しようではありませんかか。
私たちはこの判決結果をもとに国の責任を粘り強く追及し、「静かに眠れる夜を取り戻す」ことを必ず実現していくため、原告が一致団結して全国の被害に苦しむ仲間と連帯し、基地被害に立ち向かいましょう。


小松基地爆音訴訟の判決
弁護士  中杉 喜代司
新横田基地公害訴訟の対国訴訟の一審判決が、いよいよ5月30日に宣告されることになりましたが、今年は、全国の基地騒音公害訴訟のうち、3月に小松基地、5月に新横田基地、秋に厚木基地と3つの新訴訟の一審判決が相継いで宣告されます。
そのトップを切って、小松基地第三、四次訴訟(原告数1765名)の判決が3月6日に金沢地裁で宣告されました。
この判決では、次の3点で、これまでの判決を前進させました。

@小松訴訟ではこれまで認められていなかった75W地域の原告にも、横田訴訟と同様に、過去の損害賠償が認められました。
損害賠償額も、過去最高だった旧横田第三次訴訟二審判決とほぼ同額まで増額されました。

A被告国は、小松訴訟でも新横田訴訟と同様に、昼間騒音地域にいない勤労者については、賠償額を減らせとか、「危険への接近」と言われている騒音地域であることを知って転居してきた原告には損害賠償を認めるなとか、裁判所の認める損害賠償額を何とか減らそうとする主張を繰り返してきました。
ところが、小松判決では、これらの国の主張をほとんど認めず、「危険への接近」の適用を制限して、多くの原告の損害賠償額を減額しませんでした。

B小松基地と同じ自衛隊の管理する厚木基地訴訟では、最高裁が民事訴訟で差止請求すること自体を認めない判決を出していましたが、小松判決では、この最高裁の考え方に逆らって、民事訴訟で差止請求をすることも適法だと判断しました。

しかし、残念ながら小松判決では、騒音のひどさが飛行の差止を認めるまでの限度に至っていないとして、差止請求自体は認めませんでした。
また、小松判決では、日常生活の妨害や精神的な被害は認めたものの、難聴・高血圧などの身体的被害・健康被害の可能性や睡眠妨害を被害として認めませんでした。
小松訴訟では、差止請求が認められず、一方では損害賠償が増額されたことから、原告と被告国の双方が控訴しました。
このように、小松判決は、とても十分な判決であったとは言えません。 しかし、これまでの判決を一歩前進させた点、新訴訟判決の一番手の役割を果たしたと評価できます。
次は、いよいよ我々の新横田訴訟一審判決です。この小松判決や旧横田訴訟判決を一歩も二歩も前進させる判決を勝ち取り、静かな夜を取り戻せるよう頑張りましょう。


最高裁判決に対する各界のコメント
<本間浩・駿河台大学教授(国際法)の話 >
最高裁は外国の政府を自国の裁判に服させることはできないという国際慣習法上の一般原則を根拠に夜間離着陸訓練は米国の「主権行使」だから、その原則が適用されるとして、差し止め請求を一蹴した。
 しかし、住民は米軍の訓練そのものを否定したわけではなく、夜間の飛行差し止めという訓練の「方法」を問題にしたにすぎない。 にもかかわらず、判決は訓練全体をおおざっぱにとらえ、住民の権利を封じてしまった。請求を退けるにしても、住民がおかれている被害の現状にもっと耳を傾けるべきだった。司法のあり方として問題があると言わざるを得ない。

<北川穰一>
昭島市長  市は横田基地の飛行直下に位置し航空機騒音による影響を強く受けているため、裁判を注視してきた。判決内容についてまだ十分把握していないが、航空機騒音の軽減を求める提訴者の切実な思いは、裁判を通じて伝えられたものと考えている。
 
  (朝日新聞より)
大成功判決前決起集会  決意をこめて
瑞穂支部  清水 幸一
私は基地の北側に住んでいます。通勤にJR八高線と西武線を使います。八高線は箱根ヶ崎の駅を出ると、横田基地の金網に沿って電車が走ります。
昨年9月の米国でのテロ事件直後から横田基地では厳重な警備体制が敷かれました。
基地上空は夜間でもヘリコプターが旋回し、基地の各ゲートにはものものしいバリケードが築かれ、鉄かぶと・防弾チョッキに自動小銃で武装したアメリカ兵が歩哨に立ち、日本人ガードマンも武装して警備にあたるといった異様な光景がしばらく続きました。
通勤客で混み合う八高線車内は、箱根ヶ崎・東福生間を常に複数の警官がパトロールするという状況も続きました。
米国政府と軍当局、そして日本政府や警視庁も「横田基地を標的にした大がかりな報復テロが起きる」と大まじめに考えているのです。
現在こうした状況は緩和されましたが、しかしこの出来事は「横田基地が第一線の軍事基地であること」「有事の際には戦場にもなりうること」を改めて教えてくれました。
私は「基地があるから平和が守れる」という考えより「平和のために基地をなくす」という発想こそ、現実的で具体的な提案だという思いをいっそう強くしました。
私にはこの3月に高校を卒業した娘と、中学3年の娘がいます。二人とも原告です。
親として財産らしいものを残すことはできそうもありませんが、この娘たちが成人したとき、彼女らの後継者(私の孫?)に、『以前ここには米軍横田基地があったが、多くの人々の奮闘で撤去された。
今、その跡地は平和利用されて、私たちの静かな暮らしと、日本や世界の平和のため役立っている』と語れるような社会を残してやりたいと思っています。
そのためにもこの裁判で大きな勝利を獲得したいと思っています。


集まれば出る活発な意見
瑞穂支部説明会
昨年7月の結審から8ヶ月が経とうとしていた3月24日、判決日が決まらず、じれったい思いの原告を集め「判決前説明会」を行いました。
瑞穂支部として訴訟団員の団結を高めるとともに、素朴な疑問や意見を出し合うことを重視した説明会でした。
まず、山口代表のあいさつのあと、中杉喜代司弁護士による「訴訟経過と今後」というテーマで経過表を参考に説明をしていただき、その後質疑を行いました。
「新コンターとは」という疑問をはじめとして、多くの意見・質問で予定時間をオーバーしてしまいました。 この中でテロの巻き添えとなる恐怖や高層住宅化が以前とは違った騒音の反響・増殖を生み出していることも原告から出されました。
最後に、弁護士から「控訴の可能性は非常に高い」が、国が決めた騒音区域に限った勝つ裁判を行っていること、私たちの運動が九市一町の自治体まで動かしていて前裁判から比べて格段の広がりになっていること、少し前の小松基地裁判では家族団らんの時間帯を重視した損害賠償が認められた判決が出されていることなどが話されました。
年度末の忙しい時期でしたが多くの参加を得て、今後とも運動を強めていくことを確認した会合となりました。  


声    明
  最高裁判所第二小法廷は、本日、新横田基地公害訴訟のうち、米国に対する訴訟について、我々原告(上告人)らの上告を棄却する判決を言い渡した。
  最高裁判所は、先に原告(上告人)らが国に対して提訴した夜間飛行の差止の請求について、米軍という外国軍隊の飛行活動に関することであるから筋違いだとしてこれを棄却した。この最高裁判決を受けて、原告(上告人)らが米国政府を被告として提訴したにもかかわらず、本判決は米軍に対する訴えも許さないとした。結局、最高裁判所は日本国政府に対する請求と米国政府に対する請求のいずれも不適法として斥け、米軍機による騒音差止について原告住民らの法的救済の道を最終的に閉ざしたものであり、極めて不当である。
  本判決で原告らの請求を斥けた最高裁判決の理由は、「本件差止請求及び損害賠償請求の対象である合衆国軍隊の航空機の横田基地における夜間離発着は、我が国に駐留する合衆国軍隊の公的活動そのものであり、その活動の目的ないし行為の性質上、主権的行為であることは明らかであって、国際慣習法上、民事裁判権が免除されるものであることに疑問の余地はない。」というものである。しかしながら、国家による不法行為については主権免除が認められないというのが、成文化された国内法や条約に規定されており、確立した国際慣習法と言える。横田基地での米軍機の飛行活動が不法行為であることは、最高裁判決によって司法判断として確定している。したがって、米軍機の飛行活動が主権的行為であるとしても、我が国の民事裁判権に服するものである。
  我々は、本最高裁判決にかかわらず、違法な夜間飛行差し止めというささやかな要求を断念することはない。「静かな眠れる夜を返せ」という旗を高く掲げ、国に対する訴訟、外交交渉要求等による夜間飛行制限の実現を目指し、今後とも多くの人々の御支援のもとに引き続き闘うことを誓うものである。
2002年4月12日     新横田基地公害訴訟団
               新横田基地公害訴訟弁護団
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