新横田基地公害訴訟団ニュース

第44号  (2002年7月2日)
『控訴』 夜間・早朝の飛行差止 賠償の将来請求実現めざして
代表幹事  大野 芳一
5月30日、東京地裁八王子支部は対米訴訟二次・三次及び対国訴訟についてそれぞれ判決を下しました。対米訴訟は、4月12日の最高裁判決をなぞり、アメリカの主権的行為に対して民事裁判権はおよばないとして訴えを却下。同時に、対国訴訟でも、「夜間・早朝の飛行差し止め」について「国を相手に訴えることは筋違い」とする旧最高裁判決を踏襲した判決を下し、司法自らが被害救済に背を向け、国民の裁判を受ける権利をも否定するという重大な過ちを犯すものでした。
また、損害賠償として24億円の支払いを命じたとはいえ、陳述書未提出者には賠償を認めず、加えて国の主張する「危険への接近」論を採用し、かつ防音工事を評価するなど長期裁判化する真の原因に足を踏み込まず、機械的、形式的な判決にとどまり、将来的な被害救済の展望にかける判決であったと言わざるを得ません。 
私たち訴訟団は判決後の報告集会で直ちに高裁への「控訴」意志を明確にし、さらに6月2日の拡大幹事会において、あくまでも「夜間・早朝の飛行差し止め」「損害賠償の将来請求」の実現と一審判決の問題点克服を再確認し正式に「控訴」を決定、6月11日地裁八王子支部へ手続きを行いました。
裁判所が「夜間・早朝の飛行差し止め」について司法の門を閉ざしたが、全国に点在する米軍基地での被害、とりわけ沖縄での基地被害は目にあまるものがあり、一部の住民に被害を押しつけることは国民全体にとって許し難く、何をさしおいても国の責任において解決を図るべきことが求められています。
私たちはこうした状況をふまえ、事態打開と解決への道を切り開くために、小松・厚木・嘉手納の騒音訴訟の仲間と手を取り合って運動を広げ、また、全国の公害被害者とも連携して要求を必ず実現させたいと思っています。
まずは一人ひとりがわずかでも時間を割いて身近なところで、地域で、多くの人たちと交流し『被害を被害として声に出して訴え』大きな運動の流れを作り出すことに立ち上がりましょう。
小さな力でもみんなが出し合えば大きな力が生まれます。今日から行動を起こしましょう。 


騒音激化か?  横田基地滑走路工事終了
昨年10月に始まった横田基地の滑走路補修工事(総工費49億円)が予定通り6月で完了となりました。
これに伴い航空機や人員が7月3日から12日にかけて帰ってきます。
厚木や嘉手納基地に移っていた、第459空輸隊(C-21が4機、15名)第30空輸隊(C-9が4機、56名)第374航空医療支援隊(55名)です。
新しい滑走路は幅も長さも広がり、勾配も正されたようです。
基地周辺では工事期間中「小鳥のさえずりも季節の移り変わりも実感できた」「爆音が無いというのはこんなにもいいものだったのか。永久に工事していてほしい」などと多くの住民が話していました。
しかし、住民の声をあざ笑うかのように工事は終了し、横田基地はアジア・太平洋地域に展開する米軍の空輸拠点としての活動を再開します。
整備された滑走路を大型輸送機がどんどん離発着するのではないかという基地周辺住民の不安をよそに、7月2日「滑走路再開式典」が行われます。


大型バス2台で参加  第27回全国公害被害者総行動

5月30日の地裁判決は一定の成果は得られたものの、夜間・早朝の飛行差し止めを求める私たちの期待を裏切るものでした。
6月6日、私たちはこの判決を踏まえて全国の公害被害者と手を取り合い『公害をなくし住みよい地球環境を実現しよう』を合い言葉に全国公害総行動に参加しました。
行動は環境省交渉から始まり、午後はそれぞれの団体の関連省庁との交渉を行いました。
私たち新横田基地公害訴訟・弁護団は午前中、都庁、及び都議会各会派に判決内容を報告するとともに基地被害の実態を伝えその解決に真剣に取り組むよう、また、被害の倍増につながる軍民共用空港化に反対をするよう要請しました。
午後からは外務省と防衛施設庁の二手に分かれ、おおむね以下の3項目の要請を行いました。
(一)日本政府の責任で米政府が横田基地における夜九時から翌朝七時までの飛行を規制するよう直ちに実効ある措置をとること。
(二)規制措置の手段として日本政府、周辺自治体、横田基地周辺住民の協議期間の設置。
(三)すべての周辺被害住民に訴訟を待たずに過去及び将来の損害賠償を支払うこと。


「これ以上被害を課さないで」 知事本部交渉に参加して
昭島支部  永川 安子
基地騒音公害にさらされる私たち住民にとって「安心して眠れる夜の訪れはいつ?心静かに住める日はいつ来るの?」
損害賠償はともかく、いちにちも早く米軍機の飛ばない日が来てほしいのに・・・・・などなど怒りと不安と数々の疑問を胸に抱いての対都交渉でした。
都側から2名、原告七名、弁護団2名でテーブルにつき、自己紹介、経過報告、要請書を読み上げた後、各々が被害の実態を訴えるとともに、横田基地の「軍民共用空港化」はさらに二重三重に苦しめる結果になるとして、これ以上被害を課さないでほしい旨を強く要望しました。
都側の姿勢が本気で私たち被害者の立場に立ちきれていない感を強くした要請行動でした。
また、運動を強めていくことの大切さも実感したひとときでした。


「なくせ公害」 熱気うずまく決起集会
各省庁交渉を終えた全国の公害被害者が続々と日比谷公会堂に集まりました。
今年は自動車公害で喘息患者をかかえる東京大気汚染裁判の判決を間近にし、その支援者や新横田訴訟の高裁にむけての新たなたたかいを励ます支援者など1300余名が会場を埋めつくしました。
集会は黒坂黒太郎さんの原爆に倒れた木でつくられたコカリナ演奏で始まり、民主党の小宮山洋子議員の励ましのあいさつをはじめ、共産党、主婦連など多くの連帯あいさつを受け、基調報告、朗読劇「27年間のたたかいと仲間たち」と続き盛り上がりを見せました。
会場では薬害ヤコブ訴訟の勝利報告と花束贈呈、24の公害被害団体、35の支援団体の紹介が行われ、連帯の雰囲気がいっきに頂点に達しました。
最後にアピールを採択、「ふるさと」の全員合唱で幕を閉じました。


不安がのこる
民主党・生活者ネットワーク 昭島支部  谷川 セツ
初めての要請行動参加でしたが、両会派ともていねいな対応だったという印象を受けました。
ネットでは短時間でしたが国立市地区選出の大西都議会議員も出席して下さり、今後も一層の協力をお願いすることができました。
はじめに伊藤弁護士、池田さんから要請内容を詳しく話された後で、参加者全員から質問や要望、住民が受けている厳しい実態を具体的に話すことができました。
一番不安に思ったことは、石原都知事の政策として主張している「軍民共用空港化」に関しては両会派ともはっきりと反対できない状況があるということです。
「経済効果」とか「便利性」という名目の元に地域住民が大きな犠牲を強いられることだけは絶対に許せないという思いを強くして都庁を後にしました。


公明党の方々にお願いと期待
八王子支部  田中 令子
5月30日の東京地裁での国の損害賠償、対米訴訟の判決の余韻が全身に残ったままで6月6日は東京都議会各会派、外務省、防衛施設庁への要請交渉に分担して参加しました。
公明党では、松浦先生はじめ代表幹事、責任者による要請書に沿っての説明からスタートしました。対応の谷村議員と米沢事務局長は終始好意的で、議員は「一町九市の原告の皆さんが長期にわたり整然と闘われたことに敬意を表します。私も通勤途上で入間の自衛隊訓練機の騒音にあいます。個人差があるとしても被害の大きさをお察しできます。改善策、基地撤去に応援していきます。」と力強いメッセージを寄せてくださいました。
また、事務局長は「厚木在住で長年爆音で悩まされており、転居を考えたこともあるので原告の皆さんと同じ心境です。今後も要請にこたえられるよう支援していきます。」と連帯感あふれる声援を送ってくださいました。
お二人の議会、市民活動の中で、私たちの悲願「静かな夜を・・」の運動が広がっていくことに期待とお願いを込めて退場しました。
石原都知事は軍民共用について都議会の中では積極的な行動はないとのことでした。


全面支援
日本共産党 瑞穂支部  清水 幸一
日本共産党都議団への要請には加納力弁護士他10名が参加しました。対応は古館和憲、清水ひで子都議会議員でした。 古館議員からは「石原都政は横田基地の軍民共用化計画を捨ててはおらず、具体化へ向けた研究を進めている」との説明を受けました。
清水議員からは「住まいは八王子の北野です。騒音被害のひどさは身を持って体験している。訴訟団は頑張って勝利してください」との激励を受けました。
私は「昨年9月の米国でのテロの後の横田基地の異様な厳戒体制は、テロや戦争が起きれば横田基地が大がかりな攻撃目標にされる事実を物語っているこんな危険な基地を民間空港として使うなど許されない」と述べ、訴訟団を応援してほしいと要請しました。
短時間でしたが、両議員から、日本共産党の新横田基地公害訴訟全面支援の態度がハッキリと伝わったと思いました。


攻撃される不安増大
6月17日から横田基地で核兵器を含むあらゆる攻撃に対応するための即応作戦演習が開始されました。
この演習の驚くべきことはこれまでの即応体制演習とは違い、横田基地がNBC(核・生物・化学)を含むあらゆる攻撃がされたことを前提としていることです。また、グランド・バーストシュミレータ(地上爆発模擬装置)、生物化学攻撃に対応する装置などをもちいて行うと言われています。
5月15日夜間に行われた同様の演習は、大音響のサイレンや爆発音などにより「何事が起きたのか」「テロ攻撃かもしれない」と恐怖に襲われた多数の住民が自治体に200を越えて苦情、問い合わせをしました。
今回のあらゆる攻撃に対する演習ということは「攻撃される不安」を駆り立てます。しかも、アメリカはテロ支援国家には核兵器の使用も辞さないという戦略を打ち出しているのです。基地周辺に住むとは様々な不安を抱えて生活しなければならないということでしょうか。
この演習は今後8月から11月まで毎月5日間づつ行われます。


『ようこそ中学生』 
米軍横田基地とはどんなところか、騒音被害の実態は、騒音訴訟とはどんなものか、などを調べに年間、十数団体が見学に訪れます。
地裁八王子支部での判決の影響で関心が高まり、東大川人ゼミナールや東京経済大学の先生など多くの見学者の対応に追われています。そんな中、中学生が「被害を聞きたい」と訪れました。


横田基地の騒音公害について知りた
昭島支部  堀 美保子
梅雨寒の6月25日午前、愛知県小牧市の小牧西中学校3年の生徒6人が付き添いの先生ひとりと一緒に事務所を訪れました。 
修学旅行のグループ学習のためです。
小牧市にも自衛隊基地があり飛行機騒音に悩まされているためか、グループ学習したいことを学年でアンケートしたところ、一番多かったのが横田基地飛行機騒音公害だったそうです。
高校生、大学生はよくきますが、中学生は珍しいお客様です。
展示資料を見せて被害の実態や裁判について説明したり、ビデオを見せたりして応対しました。
「騒音で街が無くなってしまうほどだったなんて驚いた。」「他の公害裁判をしている人たちと交流したり、韓国の米軍基地騒音公害で裁判している人たちとも交流してるなんてすごいと思う。」と感想をのべたり、今回の判決で賠償金はいくらだったか、裁判はあと何年かかるのか、運動の費用はどうしているのか、など鋭い質問がでました。 午後はお楽しみディズニーランドの見学だと、いそいそと帰って行きました。


差止の悲願を運動の中心に
日野支部  樋口 恕雄
6月22日「判決と控訴説明会」を行いました。日野支部では三つの地域に分けて説明会を開く予定ですが、今回の地域50世帯に「お知らせ」を世話人Kさんが手配りで届けました。
原告の関心の程はどうなのか、判決から控訴への理解はどのくらい届いているのだろうかと思いながら待ちました。 
足かけ7年、1万人訴訟をめざして参加者を募ったこと、そして陳述書づくりのことがついこの間のことのようです。
当日参加者は13名でした。幹事として原告のみなさんへの訴えが不十分だった反省を痛感しました。
「説明会」はまず、弁護士から40分ほど詳しく判決内容を話してもらいました。賠償金獲得の重要性や、陳述書未提出などの厳しい判決の内容が理解できました。
陳述書未提出の原告が二名参加され、当時の裁判の捉え方、理解の弱さなど、感想がだされました。
また、「コンターって何?」「W値って何?」と基本的な質問もでて、理解を得られたことはとても良かったと思います。そのほか「提訴後生まれた子どもは原告になれないのか」と答えるのがつらい質問も出ました。同じ被害を受けているのに賠償の対象になれないのはおかしい。裁判を繰り返さなくても救済の方法を作るべきだと思いました。 
今回の説明会で、高裁への控訴の意味の大きさをより強く感じています。
全原告が判決内容を知って、賠償金だけに目をむけないで、差止の悲願を運動の中心におき、将来にむけて国、都、地方自治体の行政に政治的解決を働きかけ、願いが実現するまでこの闘いは続くと伝えながら「委任状」を作成することが大事だと思いました。説明会はまだ続きます。

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